2000 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液からの金属電析における陰極近傍のラマン分光による新しい反応解析法
Project/Area Number |
11750629
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大貝 猛 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (60253481)
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Keywords | 紫外可視赤外分光法 / ラマン分光法 / 赤外分光法 / 金属水酸化物 / 陰極界面pH / 亜鉛 / クロム / 銅 |
Research Abstract |
本年度はCuおよびZnなどの金属イオンが水溶液から電析する際に,陰極表面に吸着すると推定される水溶性高分子の挙動を調べるため,紫外可視分光法,赤外分光法およびラマン分光法により金属表面への高分子の吸着過程を調査した。 まず,以下の方法で吸着量を評価した。ゼラチンまたはポリエチレングリコール等の高分子を含有する水溶液中に吸着担体(金属Cuまたは金属Zn粉末)を投入した。この溶液を1分間撹拌して吸着平衡に到達させた。吸着担体が沈降後,上澄み溶液をピペットでサンプリングした。次に,石英セル中でこの上澄み溶液の紫外吸光度(190nm)を測定し高分子濃度を定量した。吸着操作前後の吸光度の変化から金属表面への高分子の吸着量を算出した。更に,様々な分子量を有する上記の高分子について測定を行い,吸着能の分子量依存性を評価した。その結果,分子量が大きくなる程,吸着能が増大し,また,水溶液中の支持電解質の濃度が大きくなる程,吸着能は低下することが判明した。 次に,水溶性高分子および金属水酸化物さらにその複合体(水溶性高分子および金属イオンを含有する水溶液から金属水酸化物を沈殿生成させたもの)の構造を赤外分光法およびラマン分光法により調査した。この結果,水溶液からZnなどの卑金属が電析する際,陰極近傍において生成すると考えられる金属水酸化物は水溶性高分子により構造的には大きく変化しないことが判明した。 以上の結果より,金属電析における上記高分子の役割は金属イオンまたは金属水酸化物と複合体を形成するのではなく,陰極金属面に吸着することによって金属電析の活性点を封鎖し,還元反応を抑制する作用であると結論できた。
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