Research Abstract |
本年度は,VOC(揮発性有機化合物)を除去することで米の食味に関連する化学的成分,物理的特性にどの程度影響を及ぼすかについて検討した。1999 年秋に収穫された玄米(ほほほの穂)13kg を容積25l の鋼板製のサイロ内に充填した。このサイロに空気を循環させるためのダクトの途中に,光触媒ハニカム/殺菌灯と活性炭充填層からなる空気浄化部を設けた。また,比較実験として,空気浄化部にランプのみを装着したサイロを用意し,同じ恒温恒湿槽内に設置した。雰囲気条件としては 梅雨時期に相当する 25℃,RH85%に設定した。測定項目としてはサイロ内空気の酸素,二酸化炭素濃度,VOC 濃度,米の食味値,米の粘弾性を示すアミログラム,テキスチュログラムを測定した。実験開始後60 日程度経過した時のサイロ内の空気質は,両サイロとも活発な呼吸状態を反映し,酸素濃度の低下,二酸化炭素濃度の大幅な上昇が見られた一方,VOC は,実験室空気の特定の VOC 濃度が硬いことを反映し,玄米から発生する VOC の寄与は相対的に低かった。また,両サイロで比較すると,全体で空気浄化部こより半分程度しか除去されておらず,十分な除去性能が得られていなかった。一方,米の指標については,米の早期の品質低下の指標とされる脂肪酸度については,明らかに空気浄化部のある方がそうでないものに比べて常に値が低くなった。しかし,物理的特性を示す両指標については有意な差は見られなかった。また,42 日経過後に温度を 30℃に上げたところ,米の化学的,物理的特性ともに顕著に変化し,浄化部の有無の差は相対的に小さくなった。以上のことから,VOC の存在が米の品質低下に影響を及ぼしていると定性的には言えるが,急激な温湿度条件の変動が米の品質低下に最も影響することから,長期間温湿度の変動の少ないストレスの小さい条件で,さらに効率の高い浄化装置により実験を行う必要があることがわかった。
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