1999 Fiscal Year Annual Research Report
r-FI-ICP-MSによる環境水中の重金属元素のスペシエーション
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11750699
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
板橋 英之 群馬大学, 工学部, 助教授 (40232384)
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Keywords | 環境水 / 銅(II) / カドミウム(II) / スペシエーション / 金属錯化容量 / キレート抽出 / テノイルトリフルオロアセトン / ジチゾン |
Research Abstract |
環境水中に溶存する重金属元素が生体に与える影響はその化学形態により異なる.本研究では,環境水中の重金属元素のスペシエーションを簡便且つ迅速に行うことができる方法を開発し,これを用いて各種の環境水中に溶存する重金属元素の化学形態を明らかにすることを目的としている.平成11年度は,銅(II)とカドミウム(II)のスペシエーションを行うための反応系の開発を行った.各種のキレート剤を用いて検討したところ,平衡論的な解析にはテノイルトリフルオロアセトン(TTA)が,速度論的な解析にはジチゾンが有効であることが分かった.そこで,平衡論的な方法として,TTAによる銅(II)の抽出反応を利用した環境水中の銅(II)のスペシエーションと銅(II)錯化容量の測定及び生成する銅(II)錯体の条件安定度定数の測定が可能な方法を開発した.また,速度論的な方法として,ジチゾンによるカドミウム(II)の抽出速度の解析から環境水中のカドミウム(II)錯化容量と生成するカドミウム(II)錯体の反応活性度の測定が可能な方法を開発した.ニトリロ三酢酸やエチレンジアミン二プロピオン酸を配位子に用いた検討から上記の方法は有効であることが示唆された.平衡論的な方法を用いて,足尾鉱毒事件で問題となった渡良瀬川河川水中の銅(II)のスペシエーションを試みたところ,銅坑道跡地付近を流れる河川水の銅(II)濃度は,他河川水の銅(II)濃度の約10倍であったが,その銅のほとんどは共存する配位子と結合した錯体として溶存していることが明らかとなった.また,銅(II)の溶存状態に及ぼすpHの影響について検討したところ,河川水のpHが5以下になった場合にはそこに溶存している銅(II)の50%以上が遊離の状態に変化することが分かった.
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