1999 Fiscal Year Annual Research Report
放射線によるポリシランの機能化とその秩序構造の構築
Project/Area Number |
11750777
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 信浩 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (10303918)
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Keywords | ポリシラン / 放射線分解 / 主鎖切断 / ガンマ線 / 保護効果 |
Research Abstract |
本研究課題における初年度として以下のような成果を得た。 側鎖にフェニル基を有するpoly(methylphenylsilane)(PMPS)および側鎖がアルキル基のみからなるpoly(di-n-hexysilane)(PDHS)を合成し、γ線照射に対する分子量の変化を調べた。その結果、PMPSについては分子量の大きな変化は見られなかったものの、PDHSでは分子量が顕著に減少することが見出された。PDHSの分子量低下の度合いは、吸収線量の増加に伴って大きくなっており、照射によって高分子鎖の切断が生じていることがわかった。試料の違いに基づく分子量変化の相違は、主鎖が炭素のみからなるポリマーについて従来より知られているように、フェニル基の保護効果に基づくものであり、耐放射線性を有するポリシランの選択の指針としては、炭素系ポリマーと同様の基準を適用できることがわかる。 γ線照射によるポリシランの分解は照射雰囲気によっても影響を受けた。すなわち、真空中で照射した場合と比較して空気中で照射した場合はより大きく分子量が減少した。このことより、空気中の酸素がポリシランの分解に重要な役割を果たしていることがわかった。従って、放射線機能化に際しては、真空中で反応を行うことが必要となる。 γ線照射に対するPMPSおよびPDHS吸収スペクトルの変化を調べたところ、切断に伴ってケイ素主鎖のσ共役に基づく吸収帯の吸光度の現象が認められた。この結果、ケイ素主鎖の切断を示すものであり、上に述べた分子量低下の結果と一致するものである。 以上のように、γ線照射による化学修飾において、主鎖の分解を抑制するためには側鎖にフェニル基を有するPMPSを用いることが効果的であることがわかったので、次年度はこの結果に基づき、ポリシランへのグラフト重合についての研究を継続していく予定である。
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