2000 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス状高分子の局所構造に関する二次元・二量子遷移固体NMR解析
Project/Area Number |
11750780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶 弘典 京都大学, 化学研究所, 助手 (30263148)
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Keywords | ガラス状高分子 / ポリエチレンナフタレート / ポリ(エチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート) / 二次元固体NMR法 / 二量子遷移固体NMR法 / コンホメーション / 局所構造 / 化学シフト異方性 |
Research Abstract |
ガラス状高分子の詳細な構造は、いまだに明確になっていない。ガラス状態での主鎖骨格は、溶液のθ状態と同様、rotational-isomeric-state(RIS)モデルにより記述できると考えられる。しかし、最近の計算機の高速化に伴い、分子間相互作用を考慮したシミュレーションが可能となり、Suterらは、ガラス状高分子の構造がRISモデルとは異なっていることを指摘した。これまで、実験の面からガラス状高分子の構造を解析することは困難であったが、我々が新しく開発した二次元・二量子遷移固体(2D DQ)NMR法により、その精密解析が可能となった。 本研究では、その優れた物性から今後の更なる利用が期待されているポリエチレンナフタレート(PEN)のガラス状態における局所構造を、2D DQ NMR法により解明することを目的とした。試料には、CH_2炭素を100%^<13>CダブルラベルしたPENを用いた。 α型結晶化PEN試料に対する2D DQ NMR測定の結果、CH_2-CH_2の二面角が100%transの状態にあることが確認できた。これは、X線回折の結果と一致しており、本手法の定量性・有用性が確認できる。さらに、X線回折では詳細な解析が困難なガラス状PENの測定・解析を行った結果、ガラス状態では、trans:gauche=14%:86%(±5%)であること、また、各々の二面角は、180°および±70°で、その分布は5°以下と狭いことが明らかとなった。これらの結果はsuterらの結果とは異なっており、RISモデルによる近似が妥当であることを実験的に証明している。また、ガラス状態と結晶状態における明確なコンホメーションの違いから、ガラス構造に対し提唱されているlocally ordered bundledモデル、nano-crystallineモデルも適当でないことが明らかとなった。
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