1999 Fiscal Year Annual Research Report
湛水深のコントロールを用いた水稲生育制御の新水稲栽培技術としての確立
Project/Area Number |
11760014
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大江 真道 大阪府立大学, 農学部, 助手 (60244662)
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Keywords | 分げつ / 深水管理 / 根系 / 根の重心 / 生育制御 / 水稲 / T / R比 / 湛水深 |
Research Abstract |
今年度は水稲生育制御のための湛水深のコントロールが根系の発達と根系の生理に及ぼす影響について解析した.日本晴を供試して処理区(深水管理)と,対照区(浅水管理)の2区で行った.処理区は分げつ盛期から最高分げつ期に至る17日間水深約28cmの深水とした.根系発達の解析は,土壌に垂直に挿した塩ビ板に沿って生育させた根系(壁面観察法)を撮影し,根の像が占める面積(根面積)について解析した.処理終了時期の処理区の根系をみると,総根面積(根量)は対照区よりも小さく,領域別に解析した結果,浅い角度(0°〜45°)と株から離れた領域の根面積が劣った.また,根重についてもこの時期は対照区よりも少なかった.しかし出穂期にかけて根面積と根重は顕著に増加し,出穂期には対照区を上回った.処理区の根面積を領域別に解析した結果,処理終了時から出穂期にかけて深い角度(45°〜90°)で根系が著しく発達することが明らかとなった.根の深根性の程度を示す「根の重心」は出穂期に対照区を大きく上回っていた.また,処理区のT/R比(地上部/地下部乾物比)は,処理終了時期から出穂期にかけて対照区よりも小さくなり,すなわち根への乾物分配が優ることが推察された.以上から深水処理によって,根系の発達は一時的に抑制されたが,深水処理終了時期から出穂期にかけてはより発達し,深く張ることが明らかとなった.次に幼穂形成期を含むこの生育時期の根の活力は収量への影響が大であることから,呼吸量を解析した結果,深水区の単位根重当たりの呼吸活性は,深水という嫌気的な条件下に置かれていたことにもかかわらず,対照区に比べて劣る傾向は認められなかった.来年度は出穂期にかけての根系の著しい発達の詳細な観察にあわせて,さらにその生理機作について体内エチレン濃度の変化,地上部・地下部の物質分配(N^<15>,C^<13>)の変化から検討する予定である.
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