1999 Fiscal Year Annual Research Report
水辺環境の改変・整備が藻類の種多様性に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
11760018
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 和弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60242161)
|
Keywords | 付着藻類 / 珪藻 / 種組成 / 多様性 / 水質 / 水辺 / 生物生息地 / 移入 |
Research Abstract |
水域、水辺の単純化が、水文学的条件および基質の多様性を低下させ、あるいは種の移入の起こりやすさを変化させることで、藻類の種多様性にどのような影響を与えるかを体系的に明らかにし、現在行われている生物生息地の形成を藻類の種多様性の観点から評価すべく、野外調査を実施した。青梅市内の多摩川、水海道市内の小貝川、及び佐原市内の利根川、与田浦ならびに隣接する水田と用水路を調査対象地に選び、100あまりの試料を採取するとともに水質の分析を行った。その結果、藻類群集の種組成は、水域の形状に対応して量的のみならず質的にも変化しており、特に、河川の主流路から平水時には完全に切り離されている後背水域においては、主流路とは大きく組成の異なる群集が成立しており、かつ種多様性が高かった。水辺の改修により水域の多様性が失われると、藻類の種多様性もまた損なわれると言える。加えて、付着基物や水際の植生、水文学的条件も、藻類群集の種組成に量的な違いをもたらしていた。質的な違いが見られなかったのは、水流による外部からの新しい個体の移入が常時あるためではないかと考えられるが、この点については今後さらに検証が必要である。以上の結果から、藻類の種多様性を維持するためには、主流路の環境、すなわち水辺の形状や植生などを多様にするだけでは不十分で、通常は主流路からの流入がない池や、伏流水の湧出、たまり水など、自然な川原では普通に見られる多様な水域が必要であることが指摘できた。次年度では、より多くのデータを集めて結果の補強、拡大を図り、それを公表していくと同時に、この成果に基づく水域環境の区分と、それを利用した水辺の環境計画手法の構築を行う予定である。
|