2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト抗体産生細胞における軽鎖遺伝子の発現シフト現象の解明とその応用
Project/Area Number |
11760070
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
立花 宏文 九州大学, 農学研究院, 助教授 (70236545)
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Keywords | カフェイン / 抗体 / 軽鎖遺伝子 / 遺伝子組み換え / RAG / 胚型転写 |
Research Abstract |
ヒト抗体産生細胞がカフェインや植物レクチンの刺激により、本来産生していた抗体軽鎖を消失し、代わりに新たな軽鎖を産生する細胞が高頻度に出現する軽鎖遺伝子の発現シフト現象(Light chain shifting)を見出した。Light chain shiftingを起こした細胞より産生された抗体は、いずれも本来の抗原結合性を大きく変化させていることを明らかにしてきた。そこで本研究課題では、Light chain shiftingの自己抗体産生機構としての可能性について検討を行った。自己免疫病では、その発症に抗DNA抗体や抗赤血球抗体などの自己抗体の産生が直接的な役割を果たしているが、その産生機構はほとんど明らかにされていない。Light chain shiftingの自己抗体の産生への関与が明らかになれば、その誘導機構を解明することで自己抗体の産生を伴うことの多い自己免疫疾患の原因究明につながる可能性がある。そこで、Light chain shiftingによって発現した抗体の性質(自己抗原との反応性や軽鎖遺伝子の構造)を明らかにするため、Light chain shiftingを起こし軽鎖遺伝子の発現を変化させた細胞を多数クローニングして、それぞれの細胞より抗体遺伝子を調製し、その構造解析を行った。その結果、自己反応性を示した抗体の軽鎖の多くは、その可変領域に組み換えの際に生じたN領域を有していることが明らかとなった。このN領域は、重鎖の可変領域にのみ存在するとされ、デオキシヌクレオチド添加酵素(TdT)の働きにより形成される。実際、Light chain shifting誘導性の細胞では、TdTの発現が見られることを確認した。また、自己反応性を有する抗体軽鎖は、特定のV遺伝子を利用した遺伝子組み換えによるものであることが明らかとなった。 Light chain shiftingは、従来よりいわれていた抗体遺伝子の組み換え誘導条件であるRAG-1,2の発現と胚型転写の誘導という二つの条件では誘導されず、その誘導には第三の因子が関与していることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Tachibana H: "Induction of light chain replacement in human plasma cells by caffeine independent from enhancement of RAG proteins expression and germ-line transcription"J.Biol.Chem. 275. 5927-5933 (2000)
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[Publications] Tachibana H: "Induction of secondary light chain gene recombination in human plasma cells by caffeine is independent from both the up-regulation of RAG proteins expression and germ-line transcription"In Vitro Cell.Dev.Biol.. 36. 81A (2000)
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[Publications] 立花宏文: "生物機能の新展開-人類の生存をかけて-"日本食品出版. 111 (2000)