1999 Fiscal Year Annual Research Report
ハブ毒中のアポトーシス誘導活性成分の同定及びその作用機序の解明
Project/Area Number |
11760079
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
上田 直子 (小田 直子) 熊本工業大学, 工学部, 講師 (70211828)
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Keywords | アポトーシス / ホスホリパーゼA_2 / ハブ毒 / カスパーゼ非依存 |
Research Abstract |
ハブ粗毒に含まれる数種のホスホリパーゼA_2(PLA_2)アイソザイムのうち、低活性型酵素で塩基性の高いLys49PLA_2(BPI及びBPII)にヒトガシ細胞に対するアポトーシス(細胞自滅)活性が存在し、高活性型のAsp49PLA_2にはその活性が見られないことを発見し、その性質並びに作用機序を考察した。 Lys49PLA_2は、HL-60細胞に対し濃度並びに反応時間に依存しアポトーシス誘導活性の形態学的変化であるアポトーシス小体を示した。一方、Asp49-PLA_2はアポトーシス誘導活性を示さなかった。次にアポトーシス実行過程に代表的な酵素群カスパーゼの経路がLys49-PLA_2のアポトーシス誘導活性に関与しているか調べた。カスパーゼ阻害剤はフローサイトメトリーによる細胞性状の解析においてLys49-PLA_2のHL-60細胞死に阻害効果を示さなかった。カスパーゼ酵素活性もアポトーシス非誘導と何ら変化しなかった。カスパーゼ酵素群の代表的な基質であるポリADPリボースポリメラーゼもウエスタンブロット解析にて分解されていなかった。これらの結果より,Lys49-PLA_2のHL-60細胞に対するアポトーシス誘導活性はカスパーゼ非依存的なアポトーシス誘導活性であると結論した。次にどの様なメカニズムでLys49PLA_2のHL-60細胞に対するアポトーシスが誘導されているかを明らかにするために,まずPLA_2の酵素活性とアポトーシス誘導の関係に注目した。Lys49-PLA_2の好ましい基質がHL-60細胞表面に存在し,その酵素反応産物がメディエーターとしてアポトーシスを誘導している可能性が考えられるためである。Lys49PLA_2の触媒活性部位残基His48をp-ブロモフェナシルブトミド(pBPB)で不活化した酵素を調製した。調製した酵素はリン脂質分解活性が消失し,アミノ酸分析においてHis48が完全に修飾されていること,また円二色測定により高次構造が保持されていることも確認した。pBP-Lys49-PLA_2のアポトーシス誘導活性はHL-60細胞に対してLys49-PLA_2と同程度の活性を示した。以上の結果から,Lys49-PLA_2によるアポトーシス誘導活性はカスパーゼ非依存的であり,その酵素活性とは独立したものであると結論付けた。
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