2000 Fiscal Year Annual Research Report
選択的阻害剤を用いたスフィンゴ脂質の合成と細胞内転送過程の解析
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11760081
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
室井 誠 理化学研究所, 動物・細胞システム研究室, 研究員 (30261168)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / グルコシルセラミド / スフィンゴミエリン / 糖蛋白質 / 細胞内転送 / ミコフェノール酸 |
Research Abstract |
糖蛋白質細胞内転送阻害剤の探索系で活性の認められたPenicillium属F13459株の生産する活性物質の単離を行った。10Lの培養液から55mgの活性物質F13459物質を単離した。構造解析の結果、F13459物質はミコフェノール酸の誘導体である新規化合物3,4-dihydro-3,4,6,8-tetrahydroxy-3-methyl-1H-2-benzopyran-1-one 4-O-mycophenolateであった。F13459はNDV感染BHK細胞の細胞融合を3.2mg/ml以上の濃度で合胞体形成阻害した。赤血球凝集素の合成は25mg/mlで強く阻害されたが、6.25と3.2mg/mlの濃度では赤血球凝集素の合成は顕著に阻害されず、合胞体形成が阻害された。従って、この濃度では糖蛋白質の細胞内転送が阻害されることが示唆された。F13459の阻害がグアノシンを添加によって回復することや、エステル部分の加水分解後のサンプルでは、ミコフェノール酸の部分にのみ阻害活性が認められたことから、阻害活性はミコフェノール酸と同様なものであることが示唆された。 C_6-NBD-ceramideを用いてBHK細胞のグルコシルセラミドとスフィンゴミエリンの合成と細胞内転送を解析した。糖蛋白質並びにスフィンゴミエリンの細胞内転送阻害剤であるBrefeldin A存在下では、C_6-NBD-グルコシルセラミドとC_6-NBD-スフィンゴミエリンの合成亢進が認められた。スフィンゴ脂質の合成の場であるゴルジ体の形態に作用する阻害剤ではモネンシンでも同様の作用が認められたが、オカダ酸ではスフィンゴミエリンのみが合成亢進していた。BFA存在下で認められる1.6-2.8倍のC_6-NBD-グルコシルセラミドの合成亢進は濃度非依存的であるのに対してC_6-NBD-スフィンゴミエリンの場合には濃度依存的であった。また、C_6-NBD-グルコシルセラミドの合成亢進はシクロヘキシミドやアクチノマイシンDで抑制されることから、転写の段階で制御されていることが示唆された。C_6-NBD-スフィンゴミエリンの場合は抑制が起こらなかったことから、これらの過程は別のメカニズムに起因すると考えられる。また、C_6-NBD-グルコシルセラミドとC_6-NBD-スフィンゴミエリンの細胞内転送はBFA非感受性であることが示唆された。
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