1999 Fiscal Year Annual Research Report
食品中でのタンパク質の高次構造変化と物性発現に関する研究
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11760100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 智幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40228953)
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Keywords | sol-gel transition / perocolation / dynamic shear modulus / dynamic light scattering / scaling law |
Research Abstract |
分子が相互作用して網目構造が形成された結果に起因するマクロ物理量がバーコレーション理論: A=k・(φ-φc)^d (A:物理量、k:比例係数、φ:相互作用する分子の体積分率、φc:臨界点、α:臨界指数)で解析できることが知られている。本研究では、食品の力学物性と網目構造との相関をバーコレーション理論に基づいて体系的に把握し、網目構造が関与する食品の加工特性の高度化を図ることを目指す。そのために、まずモデル系としてアガロスを選び、力学物性と構造変化との関係を検討した。アガロースの構造変化は円二色性スペクトルを測定し、降温ゲル化過程において顕著な温度依存性を示した210nmでの楕円率をヘリックス分率の指標とした。相関距離は動的光散乱法により測定した。0.15%アガロースゲルの相関距離は、温度が低くなりヘリックス分率が大きくなるにつれて小さくなり、楕円率によって良好にスケールされた。動的弾性率の温度依存性についても楕円率により良好にスケールされ、その臨界指数は1.87であった。弾性のメカニズムによって異なる3種の表現式について、その適用妥当性を検討したところ、動的弾性率の臨界指数tと相関距離の臨界指数υの間にはde Gennesの式(t=1+υ(d-2);d:空間次元)が成立した。このことから、アガロースゲルでは高分子鎖が固く、たわみにくいことが示唆された。本年度の研究によって解析手法が確立したので、次度年では、タンパク質の高次構造変化を解析しnative状態のタンパク質構造変化を起こしたタンパク質の存在比を定量的に把握することを試みる。そして、構造変化の進行度と物性・加工特性の発現過程との相関についてパーコレーション理論による解析を試み、理論の適用妥当性を検討する。
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