1999 Fiscal Year Annual Research Report
三次元蛍光光度法を用いた森林土壌中の腐植物質の空間分布及び移動特性の把握
Project/Area Number |
11760114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 麻美 京都大学, 大学院・農学研究科, 文部教官助手 (60273497)
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Keywords | 森林土壌 / 蛍光物質 / 腐植物質 / 物質循環 |
Research Abstract |
流域内の蛍光物質の空間分布および移動特性という切り口から、森林土壌中での物質の相互作用のメカニズムおよび森林流域における物質循環過程を調べることを本研究の目的とした。カルボキシル基やフェノール性水酸基など種々の官能基を有する腐植物質には組成や構造により蛍光を発する物質(蛍光物質)が存在するが、蛍光物質の蛍光特性を利用した三次元蛍光光度法を用いた解析を試みた。観測は滋賀県南部に位置する桐生水文試験地内マツ沢流域で行った。土壌溶液の性質を最も反映している不飽和帯地下水では、長波長側に2ヶ所のピークがあったが、遷移帯地下水から飽和帯地下水へと水移動に伴ってピークの位置が短波長側にシフトし、ピーク強度も低下した。飽和帯地下水ではピークが1ヶ所だけとなった。湧水、渓流水は、ピーク位置が不明瞭なほどまでピークの強度が低下した。不飽和帯地下水および遷移帯地下水と、斜面上部、斜面中部表層の土壌溶液のピーク位置はよく重なったことから、不飽和帯地下水、遷移帯地下水は、不飽和土壌中の土壌溶液が飽和側方流により移動していることが確認された。斜面下部の土壌溶液は遷移帯地下水と飽和帯地下水の中間タイプという傾向を示した。溶存有機炭素濃度についても、ピーク強度と同様に不飽和帯、遷移帯、湧水、渓流水という順に低下し、土壌溶液では表層から下層にかけて低下した。また、溶存有機炭素濃度とピーク強度とは高い相関を示した。水移動に伴った試料タイプの特性と蛍光スペクトルとはよく対応していた。これは蛍光物質の性質、量の変化を示していると考えられた。今後、季節変化についての詳細を調べる予定である。
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