1999 Fiscal Year Annual Research Report
中国における農業経営の垂直的組織化およびその政策的含意に関する研究
Project/Area Number |
11760155
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石 敏俊 筑波大学, 農林学系, 助教授 (90282318)
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Keywords | 垂直的組織化 / 農業産業化経営 / 取引費用 / リスク・シェアリング / モラル・ハザード |
Research Abstract |
1.中国の各地で取り組まれている「農業産業化経営」という農業経営の垂直的組織化について,その政策理念は市場の不完全性に対応する精度適応,すなわち不完全市場の下での個別農家経営の市場対応を補完するために,垂直的関係にある農産物の生産・加工・流通等各段階の活動の調整を図るものであると整理した。さらに,「農業産業化経営」の実践を踏まえ,その類型区分を行った。その主要類型として「アグリビジネス企業+農家」,「合作社+農家」,「産地卸売市場+農家」等があげられた。そのうえ,「農業産業化経営」のなかの最も主要な類型である「アグリビジネス企業+農家」について,山東省,河北省,安徽省における養鶏経営,肉牛経営,野菜作経営の垂直的組織化の実態調査を行った。山東省諸城市養鶏経営および高密市野菜作経営の垂直的組織化の事例調査に基づき取りまとめた論文(中国における農業経営の垂直的組織化:理念と実践-山東省「農業産業化経営」の事例を中心に-)は,大学紀要『筑波大学農林社会経済研究』に公表した。 2.上記の論文において,垂直的組織化の下での生産過程と加工・流通過程の垂直的調整,農業経営の出資構造,利益分配構造,リスク・シェアリング等の組織構造,および参加主体であるアグリビジネス企業と生産農家のモチベーションを分析し,垂直的組織化はアグリビジネス企業と生産農家のインセンティブ契約であることを明らかにした。さらに,垂直的組織化は,不完全市場の下での生産農家経営の市場リスク軽減,農産物品質の向上,資金力や技術力による商品化農業への参入障壁の緩和,および地域農業の振興といった効果をもたらしているが,取引価格の設定や契約履行等に関わるアグリビジネス企業および生産農家のモラル・ハザード問題を対応するメカニズムの確立が肝要であり,そのため,生産農家の水平的組織化が要請されることを指摘した。
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Research Products
(1 results)