2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11760214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松木 直章 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40251417)
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Keywords | 心筋 / 虚血 / フリーラジカル / 試験管内モデル / リン脂質 |
Research Abstract |
虚血性心疾患における心筋細胞膜障害のメカニズムについて検討するため、まず株化細胞を用いた試験管内モデルを確立した。すなわち、マウス由来C2C12細胞ならびにラット由来H9C2細胞の解糖系をヨード酢酸にて阻害し、さらにロテノン、シアンによりミトコンドリア呼吸鎖を阻害した。この実験系を用い、共焦点レーザー顕微鏡的方法で膜構造の変化を解析するとともに、常法を用いて細胞内アデノシン三リン酸、カルシウムイオン濃度、フリーラジカルならびに脂質過酸化反応産物を経時的に測定した。その結果、虚血処理開始5分後には細胞内アデノシン三リン酸が枯渇し、引き続いてフリーラジカル産生と脂質過酸過反応産物が増加し、やや遅れて細胞内カルシウム濃度が上昇し、その後(処置開始後90〜120分後)に細胞死が観察された。形質膜や小胞体の縮合(クラスタリング)の経時的変化は脂質過酸過反応産物の増加と平行して生じ、さらにスビントラップ剤の添加により抑制されたことから、この形態学的変化には膜リン脂質の酸化的変性が大きく関与すると推察された。また、形質膜の突出(ブレビング)は主に細胞質内カルシウム濃度の上昇後に生じており、カルシウムチャネル阻害剤により一部が抑制された。これらの結果は、膜の縮合と突出がそれぞれ別個のメカニズムで生じることを示唆し、フォスフォリパーゼA2阻害剤はブレビングを抑制するが膜リン脂質の酸化をむしろ亢進させるという過去の実験結果とも矛盾しなかった。フリーラジカル産生と脂質過酸過反応産物の増加は細胞内カルシウム濃度上昇やブレビングに先行して生じており、今後心筋細胞の虚血細胞死を研究するにあたり、優先的に解決すべき問題であると考えられた。
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