1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11760220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 幸恵 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30301120)
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Keywords | キチン / 溶媒和結晶 / 偏光赤外測定 |
Research Abstract |
天然高分子「キチン」はα、βの2種の結晶構造を持つ。βキチンは、酸やアルカリを作用させると結晶内膨潤を経てαキチンへと結晶転移するが、この結晶内膨潤過程で適当な溶媒に置換することで、分子鎖の擬集配列規則性を制御できる。その一例が溶媒和結晶で、βキチン結晶が特定の方向のみにおし広げられるようにして、ゲスト分子が取り込まれ、固有の結晶構造を形成する。キチン溶媒和結晶の生成機構の解明は、材料物性に支配的である分子鎖擬集構造に関する示唆を与えると考えられる。そこで当研究課題では、溶媒和結晶キチンの生成機構について、X線回析、偏光赤外分光、粘弾性、熱的測定を主体とした動的解析をおこない、キチン分子鎖どうし、及びキチン分子鎖と溶媒分子間の相互作用に果たす水素結合の役割を解明することを目的とした。 今年度においては、溶媒和結晶のひとつであるβキチン水和結晶構造について、結晶内分子間水素結合様式を明らかにした。ハオリムシ類の棲管からほぼ2軸配向した高結晶性のβキチンシートをとりだし、この高配向性と高結晶性とを保ったままで、水をゲスト分子として結晶内に取り込んだβキチン水和物を作製した。この試料を用いて、水分子の蒸発により無水βキチンにもどる過程における偏光赤外測定を行なった。重水をゲスト分子としたβキチン重水和結晶との比較により、βキチン水和結晶内のゲスト水分子、およびゲスト水分子と水和結合しているキチン分子鎖上の水酸基の赤外吸収スペクトルの帰属を行なうことができた。この結果から、(1)水和結晶内のキチン分子鎖間アミド水素結合は無水βキチンと同じ状態で保たれ、侵入したゲスト水分子との相互作用をもたないこと、(2)水分-キチン分子鎖間水素結合は分子鎖方向に垂直な面内に形成されることが明かとなった(現在投稿中)
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