1999 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系の神経回路形成過程におけるコラプシン-1の分子機構解析
Project/Area Number |
11770003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70260346)
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Keywords | ノックアウトマウス / 軸索ガイダンス / 神経回路形成 / semaphorin / 反発性ガイド分子 |
Research Abstract |
複雑な脳神経系において機能的な神経回路を形成するためには、神経軸索の正確な標的への投射が必須である。この正確な軸索投射においては、軸索先端の成長円錐が重要な役割をしている。成長円錐伸展抑制分子としてコラプシン-1が同定された。現在までにコラプシン-1は神経培養系及び発現様式の解析により、神経軸索の反発性ガイド分子であることが示唆されている。しかし、生体内で実際にコラプシン-1がどの神経回路形成に関与しているのかについては分かっていないので、コラプシン-1欠損マウスを作製し、生体内でのコラプシン-1の神経回路形成過程における機能を明らかにすることを目的とした。 コラプシン-1欠損マウスは成長して交配可能である。神経回路形成の解析のために先ずコラプシン-1欠損マウス胚を抗ニューロフィラメント抗体を使用して全胚染色を行った。コラプシン-1欠損マウスの10.5日胚では脳神経において、三叉・顔面・舌咽・迷走・副神経の走行異常が認められたが、動眼神経では認められなかった。このことより、コラプシン-1は実際に生体内で反発性の軸索ガイド分子であり、また選択性があることが明らかになった。12.5日胚では、顔面の三叉神経の走行異常が観察され、目のレンズ小体にまで神経軸索が入り込んでいた。また、コラプシン-1は軟膏に発現しており、欠損マウス胚では軟膏に向かって脊髄神経が伸びていることより、以前から知られている軟膏に神経が向かわない現象が、コラプシン-1による可能性があることが明らかになった。しかし、DiIを用いたコラプシン-1欠損マウス胚の脊髄への求心性線維の投射の解析では投射の異常が認められなかったので、機能的な冗長性が考えられる。
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