1999 Fiscal Year Annual Research Report
神経系のリンパ路 -経リンパ脳脊髄液吸収路に関する組織化学的・肉眼解剖学的研究-
Project/Area Number |
11770009
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
三浦 真弘 大分医科大学, 医学部, 助手 (50199957)
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Keywords | 脳脊髄液 / サル脊髄硬膜 / 硬膜外リンパ管 / 5'-nuclectidase / 酵素組織化学 |
Research Abstract |
平成11年度は、硬膜外リンパ管系(ELS)、特にその起始リンパ管の形態学的特徴と、脊髄硬膜のプレリンパチャンネルの微細構造の解明を主たる研究目的とした。以下、本年度中に得られた研究成果を列挙する。 1、ELSは脊髄硬膜と神経上膜移行部から起始するリンパ管系で、これまで硬膜から直接起始するリンパ管は無いものと考えられていた。今回、全載伸展標本法と酵素組織化学的手法を用いた実験から、脊髄硬膜の背側面広域から直接起始するELS所属のリンパ管が存在することを明かにした。 2、ELS起始リンパ管は、脊髄硬膜における分布様式やその発達状況に脊髄分節間で顕著な差を示した。また同リンパ管は、特に腕神経叢に相当した分節領域に限局して発達が著しく、同領域には密なリンパ管網や多数の弁を有する径の太いリンパ管が、他の分節領域と比較して有意に観察された。 3、下位胸髄・腰仙髄分節領域では、ELSの起始部は従来の報告同様、各脊髄神経根付近の神経鞘・神経上膜から直接起始しており、これらの領域の脊髄硬膜上には毛細リンパ管の分布は全く認められなかった。また、腕神経叢と対比されるべき腰仙骨神経叢の領域においても、それは同様であった。 4、鼻粘膜内のリンパ管系は、外側壁嗅部の粘膜上皮直下において嗅神経鞘に近接した領域で盲端部を多数有し、弁を有さない細いリンパ管網が、嗅神経放散に各々伴行しながら最終的に呼吸部領域のリンパ管網と合流していた。嗅部リンパ管は、呼吸部のものと比較すると径が太く、屈曲が少ない走行様式を呈した。 5、実験動物の小脳延髄槽内に標識物質を注入すると、数時間後、頸部ならびに胸部領域の主要リンパ節に注入物質が排導され、経リンパCSF吸収現象が腰部領域を除いた一般リンパ管系において確認された。 6、ELSリンパ管が多数分布する頸髄膜領域の硬膜背側断面において、プレリンパチャンネルに相当するような膠原線維束の特殊構造は認められなかった(クモ膜下腔内に注入された微粒子活性炭粒子は神経根付近においてink cuff現象を生じさせることから、今後神経根付近の硬膜の微細構築を検索する予定である)。
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[Publications] Miura M,Kato S,Ji R.C: "Structural organization of the initial lymphatics in the monkey spinal meninges as revealed by an enzyme-histochemical method."Lymphology (Suppl.). 31. 86-90 (1998)
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[Publications] Miura M,Kato S,Ludinghausen v.M: "Lymphatic drainage of the cerebrospinal fluid from monkey spinal meninges with special reference to the distribution of the cepidural lymphatics"Arch.Histol.Cytol. 61. 277-286 (1998)