1999 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性脳萎縮マウスにおけるニューロンの細胞死のメカニズムとその遺伝様式の同定
Project/Area Number |
11770128
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
島田 厚良 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 形態学部, 室長 (50311444)
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Keywords | 脳 / 病理学 / 老化促進モデルマウス / ニューロン / シナプス / 変性 / 加齢 / 遺伝 |
Research Abstract |
正常発達の後、加齢に伴い脳萎縮と痴呆症状を呈する近交系マウスSAMP10(老化促進モデルマウスの一系統)を用いて、以下の成果をあげた。 1.脳の病理学的診断に通常用いる各種染色をひととおり行った結果、SAMP10の脳には老人斑や神経原線維変化は見られないが、萎縮をきたす部位にアストロサイトの反応が生じていることを見出した。 2.TUNEL法を用いてニューロンの変性を検索したところ、(1)SAMP10では、加齢に伴って、大脳の特定の部位において、ニューロンの核内で、DNAの断片化が亢進すること、(2)このDNA断片化はアポトーシスによって起こるものではないこと、(3)DNA断片化は、大脳前頭部皮質と嗅脳系及び扁桃体に局在し、肉眼的萎縮を起こす部位にほぼ一致することから、ニューロンの細胞死や細胞体萎縮と関連する一種の変性像であると考えられることが結論づけられた。 3.ニューロピルにおける変性の証拠をつかむために、シナプトフィジンに対するウェスタンプロット解析を行ったところ、SAMP10では、大脳前頭部皮質において、加齢とともにその発現量が減少することから、シナプスの変性が生じていることが示唆された。 4.加齢に伴う大脳皮質ニューロンの微細な形態変化を探るために、ゴルジ法による染色を現在行っている。これまでに、樹状突起・スパインの微細な変化を定量的に解析する方法を考案し、この方法によれば、ニューロンの微妙な初期変化を捉えることができる予備的データを得た。 5.SAMP10マウスと、脳の正常な老化を示すSAMR1との交配実験により得られたF1世代、F2世代、さらに親世代のマウスの脳を画像解析的に検討した。これまでにえられたデータ数は、大脳萎縮の遺伝様式を同定するには不十分ではあるが、老齢時における大脳各部位の断面積がQTL(量的形質)として解析の対象になりうることが示された。
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