1999 Fiscal Year Annual Research Report
細菌逆転写酵素とcDNA産物による病原細菌進化の分子メカニズム解明
Project/Area Number |
11770141
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島本 整 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (90187443)
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Keywords | 逆転写酵素 / Vibrio cholerae / Vibrio parahaemolyticus / msDNA / レトロン / コレラ菌 / 腸炎ビブリオ |
Research Abstract |
細菌逆転写酵素は、multicopy single-stranded DNA(msDNA)と呼ばれるRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。逆転写酵素をコードする遺伝子(ret)は、msDNAをコードする領域とともに1つのオペロンを形成しており、レトロン(retron)と命名されている。msDNAやレトロンの細胞内での役割は現在のところはっきりわかっていないが、病原細菌の進化や病原性発現に何らかの役割を担っている可能性が示唆されている。 本研究では、日本における主要な食中毒原因菌である腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)と伝染病コレラの原因菌の1つであるO139コレラ菌(Vibrio cholerae O139)を材料としてレトロンのクローニングと解析を行った。まず、それぞれの菌より単離したmsDNAの塩基配列をMaxam-Gilbert法によって決定し、その配列を利用してそれぞれの菌のゲノムDNAライブラリーのスクリーニングを行った。クローニングしたDNA断片の塩基配列を決定した結果、msDNAをコードしている領域と逆転写酵素遺伝子(ret)を含む典型的なレトロンの構造が明らかになった。それぞれのmsDNAは、V.cholerae由来のものか95bases,V.parahaemolyticus由来のものが96basesのDNA部分を含んでいると推測された。そこで、それぞれの菌の頭文字とDNAの長さをとって、それぞれのmsDNAをmsDNA-Vc95、msDNA-Vp96と命名した。両msDNAの塩基配列および推定二次構造は、互いによく似ているだけでなく、病原性大腸菌(EPEC,enteropathogenic Escherichia coli)由来のmsDNA-Ec78ともかなり似ていた。これまでに大腸菌などで見つかっているmsDNAは、塩基配列レベルではほとんど似ていないが、それにもかかわらず、主に淡水域の環境に成育する病原性大腸菌やコレラ菌と海水域に成育する腸炎ビブリオにそれぞれ配列のよく似たmsDNAが存在することはレトロンの水平伝達や細菌の進化の過程を考える上で非常に興味深い。
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Research Products
(1 results)