2000 Fiscal Year Annual Research Report
細胞侵入細菌のプロテオーム解析による細胞侵入能をコードする遺伝子の探索
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11770152
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
岩城 裕子 (佐々木 裕子) 国立感染症研究所, 安全性研究部, 研究員 (10196181)
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Keywords | Mycoplasma penetrans / 細胞付着 / 細胞侵入 / 付着蛋白 |
Research Abstract |
[目的]溶血、呼吸器脱力、関節痛を伴い、抗フォスフォリピド症候群と診断された原発性Mycoplasma penetrans感染症患者の気道由来HF-2株の宿主細胞侵入能の分子機構解明の為、細胞付着、侵入関連分子の検索を行った。 [結果と考察] 1.HA阻害活性を有する抗M.penetrans抗体の作成 M.penetrans菌体をマウスに免疫し抗血清を得た。この抗血清は、M.penetransコロニーへのヒツジ赤血球吸着(HA)を阻害した。HAを阻害する抗M.penetrans抗体にてウエスタンプロットを行った結果、抗体で認識されるタンパクは30個存在した。 2.抗M.penetrans抗体におけるHA阻害能を担うタンパクの探索 M.penetrans全菌体を二次元電気泳動で展開したゲルから、上記30個のタンパクスポットと同一のスポットを切り出し、個々のタンパクをマウスに免疫して抗血清シリーズを作成した。得られた抗体を用いてM.penetransコロニーへのHA阻害活性の有無を調べた結果、3個の血清が不完全ながらコロニーへのHAを阻害した。その抗体の抗原となったタンパク(No.4,No.6およびNo.25.1)のN末端から10個のアミノ酸配列を決定し、既存のアミノ酸データベースでorthologを検索したところ、No.6はMycoplasma capricolumの57kDaの膜蛋白であるpyruvate dehydrogenase enzymeとヒットした。我々が同時に解析を行っている、M.penetrans全ゲノム配列情報から、当該ORFを検索した結果、No.4についてはM.capricolumのphosphocarrier proteinが、No.25.1についてはPseudomonas aeruginosaの未同定タンパクがヒットした。 HF-2株が気管上皮細胞内へ侵入する過程は、サル気管リングを用いた感染実験により確認した(平成11年度)。M.penetransは電顕観察においてもフラスコ様の形態を有し、チップ構造部分で宿主細胞に付着する。他の近縁種の例では、このチップ構造上に、細胞付着タンパクが複数存在する。今回、二次元電気泳動にて解析したタンパクは分子量が約60kDa以下のタンパクのみで、その抗体による不完全なHA阻害活性から、補佐的な細胞付着蛋白の同定であったと考えられる。今後の課題として、今回得られた抗体を用いてのタンパクの菌体での分布の観察ならびに高分子付着関連タンパクの同定を行う必要がある。
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[Publications] 佐々木裕子 他: "抗フォスフォリピッド症候群を呈した原発性M.penetrans感染症患者咽頭より分離されたHF-2株のカニクイザル気管上皮への細胞侵入能について"日本マイコプラズマ学会雑誌. 26. 22-24 (2000)
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[Publications] Kenri,T. et al.: "Identification of a new variable sequence in the P1 cytadhesin gene of Mycoplasma pneumoniae : Evidence for the generation of antigen variation by DNA recombination between repetitive sequences"Infection and Immunity. 67(9). 4557-4562 (1999)