1999 Fiscal Year Annual Research Report
残留性有機汚染物質の内分泌撹乱作用および免疫系への作用
Project/Area Number |
11770185
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
松井 三明 横浜市立大学, 医学部・衛生学講座, 助手 (00285115)
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Keywords | 残留性有機汚染物質 / ダイオキシン類 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
環境中に長期間安定な形で残留し、地球規模に汚染が拡大している残留性有機汚染物質の生体影響評価を目標として、初年度は環境中に直接放出される廃棄物処理後の焼却灰を対象とし、以下の4項目について検討を行った。1)焼却灰中に含まれるダイオキシン類、塩素化ナフタレン、多環芳香族炭化水素化合物の化学分析。2)研究用原子炉を用いて、中性子放射化分析法により焼却灰抽出液の有機態ハロゲン量の測定。3)ダイオキシン類様作用検定目的の系作成。4)エストロジェン様作用検定目的の系作成。 上記1)2)の検討から、焼却灰中には化学分析で得られたダイオキシン類定量結果よりも多くの有機体ハロゲン化合物が含有されており化学分析では特定されていない化合物が比較的多く存在することが示唆された。また塩素化化合物の他にも臭素化化合物や沃素化化合物が含有されていることが明らかとなった。また3)ではヒト肝癌細胞株へレポーター遺伝子を安定に導入した細胞株を作成し、ダイオキシン類による酵素誘導能を簡便に測定できる系を作成した。これを用いて焼却灰抽出液の生物学的毒性値を検討したところ、化学分析で得られた毒性値よりも、高い活性を認めた。さらに4)ではヒト乳癌細胞株へレポーター遺伝子を安定に導入した細胞株を作成し、エストロジェンによる遺伝子転写活性を簡便に測定できる系を作成した。これを用いて焼却灰抽出液のエストロジェン様作用を検討したところ、抗エストロジェン作用を持つダイオキシン類の高濃度存在下にもかかわらず、弱いエストロジェン様作用が観察された。以上3)4)の結果は、1)2)で得られた未知化合物の存在と整合性があると考えられた。今後は毒性を示すと考えられる化学物質の同定と共に、それらの環境中での挙動を検討する必要があると考えた。
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