Research Abstract |
【目的】本研究は,老人施設に勤務する介護職員の日勤時の生体負担とその要因を明らかにすることを目的として,(1)ユニットケアを導入している特別養護老人ホーム(以下特養)に勤務する介護職員の日勤時の生体負担およびエネルギー消費量を明らかにすること,(2)従来型のケアを行っている特養に勤務する介護職員の日勤時の生体負担およびエネルギー消費量(平成11年度研究実績報告)と比較すること,(3)要介護度の違いが介護職員の生体負担およびエネルギー消費量に及ぼす影響の検討を行った。 【対象および方法】山口県内のA特養に勤務する寮母を対象とした。対象は3つのユニット(ADL高,ADL低,痴呆)から各2名ずつの計6名であった。介護業務内容および作業姿勢(座位,立位,歩行,走行)はタイムスタディ法により検者が調査し,心拍数,歩数,エネルギー消費量および体幹の前傾角度を測定した。測定は2000年12月から2001年2月の間に行った。 【結果】平均勤務時間は551±13分であり,平均実労働時間は493±21分であった。介護業務別では「身の回りの世話」が315±85分と最も多かった。平均心拍数および最高心拍数に対する割合は,106±14拍/分,54.5±7.2%であった。実歩数は平均で12,157±1,576歩であった。エネルギー消費量は平均で1,679±476kcalであり,エネルギー消費量を体重と実労働時間で除した体重1kg当たり,1分間当たりのエネルギー消費量(以下作業強度)は平均で0.0612±0.0100kcal/kg/分であった。作業強度は「施設管理」が0.0681±0.0108kcal/kg/分と最も高かった。作業姿勢は立位が352±49分と最も多かった。体幹の前傾角度が90°以上を示した時間は痴呆ユニットが7分2秒と最も多かった。また,ADL高およびADL低ユニットでは10°未満の角度が最も多かった。また,ユニットケアと従来型のケアとの有意差検定の結果,対象の身体的特徴に有意差はなく,平均心拍数および作業強度に有意差はみられなかったことから,生体負担およびエネルギー消費量はほぼ同様であると推察された。要介護度別の生体負担およびエネルギー消費量には多少の違いがみられたが,各ユニットの対象が2名であったことから,今後データの追加を行い検討する必要があろう。 【まとめ】何れにせよ,ユニットケアを導入している特養に勤務する介護職員の日勤時の生体負担およびエネルギー消費量は高く,介護職員と同様に対人援助を行う看護婦^<1)>および保母^<2)>より高いことが明らかとなった。 【文献】1)藤原志朗(1992)看護労働における交代制勤務と生体負担.産業医学34,225-235. 2)鳥岡みどり他(1985)保母の1日及び労働中の消費エネルギー量について.総合保健体育科学8,115-128.
|