1999 Fiscal Year Annual Research Report
有機錫化合物の内分泌攪乱化学物質としての作用に関する研究
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11770219
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
今井 秀樹 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (00232596)
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Keywords | 内分泌攪乱化学物質 / 有機錫化合物 / トリメチル錫 / 海馬 / グルココルチコイド / コルチコステロン / デキサメサゾン / レセプター |
Research Abstract |
いくつかの有機錫化合物(トリフェニル錫やトリメチル錫)は脳内の海馬領域を特異的に傷害することが知られているが、研究代表者らはかつてこれらの有機錫化合物をラットに一回投与すると内因性グルココルチコイドであるところのコルチコステロンの血液中濃度が3-4日目に一過性に上昇し、5日目以降に同濃度が基礎レベルにまで低下することを見いだしている。本年度は、有機錫化合物のストレスの脳・神経系への傷害発現に対するグルココルチコイドの役割を検討する目的で、コルチコステロン産生器官である副腎皮質を切除したラットにトリメチル錫を投与し、14日後にトリメチル錫の特異的傷害標的である海馬の傷害を観察した。また、グルココルチコイドレセプターにはタイプ1レセプターとタイプ2レセプターとの2種があることが知られているため、一部のラットには副腎切除後それぞれの受容体のアゴニストであるコルチコステロンあるいはデキサメサゾンを慢性的に投与した。なお傷害の程度は病理組織学的検索およびグリア繊維性酸性蛋白(GFAP)の免疫組織化学分析によった。その結果従来知られていたトリメチル錫化合物による海馬傷害は副腎皮質切除によってその程度は大きくなったが、これはコルチコステロンあるいはデキサメサゾンの慢性投与によって軽減した。これは有機錫化合物による海馬傷害に内分泌系因子であるところのグルココルチコイドレセプターがattenuatorとして作用していることを示している。
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