1999 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌における難治性腹水産生に関する分子生物学的検討
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11770302
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Research Institution | Research Institute for Production Development |
Principal Investigator |
米田 俊貴 財団法人 生産開発科学研究所, 成人病科学研究室, 研究員 (60291902)
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Keywords | VEGF / 腹水 / 肝硬変 / 肝細胞癌 |
Research Abstract |
本研究は、肝硬変及び肝細胞癌症例における腹水生成におけるVascular Endothelial Growth Factor(以下VEGF)の作用を解明することを目的として計画された。本年度は肝硬変、肝細胞癌症例の腹水中でVEGF及びVEGFmRNAを測定した。対象として特発性細菌性腹膜炎(以下SBP)症例4例、SBP及び肝細胞癌を伴わない肝硬変38例、肝細胞癌(以下HCC)96例(病期によりさらに分類を加えた)、HCC以外の悪性腫瘍9例の合計147例を対選び、腹水(一部胸水を含む)中及び血中のVEGF値をELISAで測定、さらに腹水中細胞成分が得られた症例においてRT-PCR法によりVEGFmRNAの存在を検討した。腹水中VEGF値は、SBP症例およびHCC以外の悪性腫瘍症例で著明高値を示し、IV期のHCC症例においてもI-III期のHCC症例に比して高値を取った。腹水中VEGFmRNAの陽性率はSBPまたはHCC以外の悪性腫瘍で高く、SBP合併時あるいは癌性腹膜炎の際の腹水生成にVEGFが積極的に関わっているものと考えられた。しかしHCC症例で必ずしも腹水中VEGFmRNAが陽性とならないことから、VEGFは肝細胞癌における腹水にさほど重要な位置を占めない可能性も考慮されるが、今後検討を追加したい。次年度はVEGFの作用を抑制することが腹水の改善に寄与するか否かを検討したい。
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