1999 Fiscal Year Annual Research Report
痙縮と固縮における随意運動障害の病態生理と機能再建に関する大脳刺激を用いた研究
Project/Area Number |
11770327
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森田 洋 信州大学, 医学部・附属病院, 助手 (10262718)
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Keywords | パーキンソン病 / 筋固縮 / 寡動 / 皮質脊髄路 / 大脳磁気刺激 / 随意運動 |
Research Abstract |
パーキンソン病患者における、随意運動遂行時の皮質脊髄路を下行する成分の検討を中心に行い、正常対照と比較した.閾値下の大脳磁気刺激のヒラメ筋H反射に対する効果を、安静時、随意運動開始時に記録した.結果、正常者では安静時には短潜時の促通と、それに引き続いて抑制が観察され、随意運動中にはさらに短潜時の促通が出現し、抑制は消失した.それに対して、パーキンソン病患者の多くでは、随意運度に伴う促通の増加がみられなかったのみならず、逆に随意運動の開始時に抑制性下行性分の増加が見られた.この異常は淡蒼球破壊術を施行した全例で、術後正常化した.パーキンソン病では運動の開始時の運動プログラムに異常があり、本症の随意運動障害と関連していると考えられた. パーキンソン病患者においては随意運動に際して正常者で観察される腱反射の促通現象がはっきりしないことが見いだされた.この減少は電気刺激を用いて誘発されるH反射ではみられず、機械的刺激により誘発されるT波でのみ観察された.この二つの反射の際は筋紡錐の活動性もしくは連発刺激に対する神経の興奮性の変化に起因すると考えられるが、連発電気刺激によるH反射を用いた検討では単発の電気刺激と同様の促通現象が観察された.従って、この結果は筋紡錐の活動性がパーキンソン病では異常であることを示しており、即ちγ運動神経に対する中枢支配がパーキンソン病では障害されていることを示している.これは、従来から推測されていたパーキンソン病の運動障害におけるα-γ運動のニューロン間の連携障害を証明する知見と考えられる. パーキンソン病におけるシナプス前抑制についても大腿四頭筋からヒラメ筋に対する異名性Ia促通に対するシナプス前抑制を用いて検討した.結果、パーキンソン病では正常対照よりもシナプス前抑制が減少していることが明らかとなった.さらに、シナプス前抑制の減少と寡動・歩行障害に有意な相関が認められた.
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