1999 Fiscal Year Annual Research Report
AAVベクターによる神経細胞へのドーパミン合成関連酵素の多重遺伝子導入の長期効果ー導入遺伝子の長期発現とドーパミンによる細胞毒性についての検討ー
Project/Area Number |
11770333
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
静間 奈美 自治医科大学, 医学部, 助手 (40254916)
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Keywords | パーキンソン病 / 遺伝子治療 / アデノ随伴ウイルス / ドーパミン / チロシン水酸化酵素 / 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 / GTPシクロヒドロラーゼ1 / テトラヒドロビオプテリン |
Research Abstract |
私は,黒質ドーパミン(DA)神経細胞の変性により線条体のDA含量が低下するパーキンソン病(PD)の遺伝子治療法として,神経組織へ安全かつ効率良く遺伝子導入できるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて線条体のDA含量を高める治療法を研究している.既にAAVベクターを用いてDA合成系酵素のチロシン水酸化酵素(TH),芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)を遺伝子導入し,モデル動物の線条体でのDA合成を確認した.さらにDA合成を促進するにはその律速酵素であるTHの酵素活性を高めることが重要である.それにはTHの補酵素テトラヒドロビオプテリン(BH4)の細胞内濃度を高めることが有用と考え,今回はBH4合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH)の遺伝子を,AAVベクターを用いてTH,AADC遺伝子と同時に導入することを試みた.治療用遺伝子としてAAV-TH,AAV-AADC,及びAAV-GCHを作製してモデルラットに投与し,その結果,1)3種類のAAVベクターの同時投与により神経細胞に重複感染が高い割合で起きていることから,別々のベクターを用いて複数の遺伝子を同一神経細胞に効率よく導入されることが確認された.2)AAV-GCHの導入により,GCH活性の上昇とBH4合成量の増加が確認された.3)AAV-THとAAV-AADCの二者併用よりも,AAV-GCHを追加した三者併用の方が,機能的(異常回転運動の抑制)にも生化学的(DA合成量の増加)にもより有用であることが示された.4)遺伝子導入後の長期効果については,7ヶ月後で異常回転運動に対する治療効果は持続しており,かつ導入遺伝子の発現も免疫組織化学的に明瞭に確認された.以上より,AAVベクターの重複感染を利用したTH,AADC,及びGCHの各遺伝子の三者同時導入はPDの遺伝子治療として期待されることが明らかとなった.
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