Research Abstract |
本研究は虚血再灌流性末梢神経障害に対する低体温療法の保護効果を検討する目的で行われている.これまでの研究において,虚血時間中に施行する低体温療法の神経保護効果は確立されているが,再灌流中の低体温,特に長時間の低体温療法については,十分な検討がなされていない.この目的に沿って,本年度は,以下のように研究を進めた. 1.虚血再灌流性末梢神経障害モデルの再確立 従来,本実験系において用いていた3時間および5時間虚血のモデルについて,その再現性を,電気生理学的,病理学的に確認した.さらにそれよりも短時間の2時間虚血においても,より軽度ではあるが,同様の所見が認められることを確認した. 2.様々な虚血時間における神経障害の程度と低体温療法の効果 予備的に若干数のラットを用いて,3時間虚血,5時間虚血のモデルにおいて,虚再灌流時間中,各々3時間,6時間の局所低体温療法を施行したが,3時間,5時間虚血群ともに3時間,6時間の低体温療法では,十分な神経保護効果は認められなかった.3時間,5時間の虚血では侵襲が強すぎるために不可逆的な変化に陥っている可能性があるので,現在,2時間虚血の比較的経度の障害を来すモデル動において,再灌流時の局所低体温療法の効果を検討している. 一方,3時間および5時間虚血モデルにおいて,9時間,12時間の長時間の低体温療法の効果についても検討している.ただし,長時間の局所低体温を施した場合,実験動物の死亡率が高いため,十分数の検討は実施できていない.低体温の方法などに工夫が必要であるかもしれない. 次年度は,神経保護効果を確認するための適切の虚血時間,侵襲の程度の設定,再灌流時の低体温を施す時間の安全な領域の設定に主眼をおいて研究を進める予定である.
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