高ホモシステイン血症によるヒト内皮障害機序の解明と治療的試み

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11770377
• Research Institution: Kurume University
• Principal Investigator: 碓井 倫明 久留米大学, 医学部, 助手 (50279163)
• Keywords: ホモシステイン / 葉酸 / 一酸化窒素 / 血管内皮 / 動脈硬化 / 危険因子

Research Abstract

ホモシステイン(Hcy)は酸化ストレスを介して血管傷害をもたらすが、近年高Hcy血症が心血管病の新しい危険因子として注目されている。高Hcy血症患者において血管内皮機能異常がみられるが、それが原因か単なる付随現象かについては明らかではない。葉酸は再メチル化によりHcyを低下させるばかりでなく、それ自身抗酸化作用を有することからHcyによる血管傷害作用を抑制する可能性が示唆されている。そこでHcyの基質であるメチオニン(Met)を負荷することにより、健常者において血中Hcy濃度を上昇させこれが血管内皮機能に如何なる影響を及ぼすか、その変化に葉酸補充がどのような影響をもたらすか検討した。若年健常男性に対し、Met又はMet+葉酸を経口投与し、経時的に血中Hcy濃度を測定し、同時に、血管内皮機能を反応性充血時の上腕動脈の血流依存性血管拡張反応により評価した。Met負荷により血中Hcy濃度は8時間後に約4倍に上昇し24時間後には正常に復した。Hcyの血中濃度の変化と鏡像的に血管内皮機能は前から8時間後には1/2程度に減少し24時間後には回復した。葉酸の同時投与はMetによる血中Hcy濃度の上昇に影響を与えなかったが、血管内皮機能低下を著明に改善させた。即ち、Met負荷によりもたらされた内因性Hcy血中濃度上昇はダイナミックに血管内皮機能を変動させ、葉酸の同時投与は血中Hcy非依存性にMetによる内皮機能異常を改善させた。この結果は急性の"食餌性血管内皮機能異常"という新しい概念を提起し、これが葉酸同時投与により予防しうる可能性を示唆する。

Research Products

• [Publications] Usui M et al.: "Endothelial Dysfunction by Acute Hyperhomocyst(e)inemia.-Bestoration by Folic Acid-"Clinical Sciences. 96. 235-239 (1999)
• [Publications] Miyazaki H,Usui M et al.: "Hemodialysis Impairs Endothelial Function via Oxidative Stress.-Effects of Vitamin E-Coated Dialyzer-"Circulation. (in press). (2000)
• [Publications] Miyazaki H,Usui M et al.: "Endogenous Nitric Oxide Synthase Inhibitor ,A Novel Marker for Atherosclerosis."Circulation. 99. 1141-1146 (1999)
• [Publications] Ueda S,Usui M et al.: "Tetrahydrobiopterin Restores Endothelial Function in Chronic Smokers."J Am Coll Cardiol. 35. 71-75 (2000)
• [Publications] 足達 寿、碓井倫明 他: "血中ホモシステインと高血圧"日本臨床増刊 高血圧 下巻. 58. 415-417 (2000)
• [Publications] 碓井倫明 他: "高血圧による臓器障害とホモシステイン"Mebio増刊 Multiple risk factorと高血圧. 17. 81-91 (2000)
• [Publications] 碓井倫明 他: "高血圧の診断と治療"真興交易図書出版部. 297 (1999)