1999 Fiscal Year Annual Research Report
正常肺組織の放射線温熱障害について-肺癌の温熱放射線療法の基礎研究
Project/Area Number |
11770515
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
永倉 久泰 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80244359)
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Keywords | 肺癌 / 温熱療法 / 放射線治療 / Ku蛋白質 |
Research Abstract |
免疫組織染色によるKuタンパク質の発現の測定 「目的」この2,3年の研究成果により、温熱治療の放射線増感効果は、温熱治療によるKuタンパク質の失活によることが判明してきた。よって、Kuタンパク質の研究は、本研究の目的である肺癌の温熱放射線療法の基礎研究においても重要であると考えられ、本年度では、Kuタンパク質の正常肺組織及び癌組織における発現状況を調べることとした。Kuタンパク質には、分子量が異なる2種が存在(Ku80とKu70)し、これらがヘテロ2量体を構成し、触媒機能を担う分子量460kDaのポリペプチド(DNA-PKcs)と共に、DNA-PK(DNA依存性プロテインキナーゼ)を構成する。それらいずれが欠損しても、X線による2本鎖DNA切断に対する修復能が低下し、細胞が放射線感受性になることが知られている。 「方法」1984年から1996年までの間に根治照射を施行された肺癌42例の照射前生検標本を用いた。 肺癌組織としては、小細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、正常肺組織は、その生検標本に含まれる部分を用いた。 4μm厚の薄切切片をスライドグラス上でABC法にて反応させ、DABで発色させた。一次抗体には、マウスの抗ヒトKu70モノクローナル抗体、ウサギの抗ヒトKu70ポリクローナル抗体、ウサギの抗ヒトKu80ポリクローナル抗体を用いた。 「結果」肺癌42例の全例において、Kuタンパク質は、Ku70、Ku80いずれも、モノクローナルあるいはポリクローナル抗体いずれを用いても、細胞核のみが濃染し、また正常肺上皮細胞及び癌細胞いずれもすべて染色された。正常肺上皮細胞と癌細胞で、あるいは、癌細胞間で染色性に差がみられなかった。また、正常肺組織でも癌組織でも、間質細胞(繊維芽細胞や繊維細胞、毛細血管の内皮細胞)は、上皮細胞に比べ、Kuタンパク質の発現が頻度及びその発現量いずれも、低かった。 「考察」Kuタンパク質の発現が正常肺上皮細胞と癌細胞で、あるいは、癌細胞間で差がみられないということは、温熱治療によるKuタンパク質の失活の影響が正常肺上皮細胞においても癌細胞においても同様である可能性が考えられる。また、異なる組織型の肺癌でも、同様の温熱治療の放射線増感効果が期待できることが考えられる。
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