1999 Fiscal Year Annual Research Report
内在性D-セリンの脳内代謝の解明と精神疾患治療薬開発への応用に関する研究
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11770570
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山本 直樹 国立精神・神経センター, 疾病研究第三部, 室長 (70312296)
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Keywords | 精神分裂病(分裂病) / D-セリン / NMDA受容体 / グルタミン酸 / 抗精神病薬 / コアゴニスト / グリシン / PCP |
Research Abstract |
本研究は、NMDA型グルタミン酸受容体のグリシン結合部位に作用するコアゴニストであるD-セリンが精神異常発現薬PCPで誘発されるラットの異常行動を抑制することから、脳内在性D-セリンの代謝調節機構を明らかにすることにより、将来、精神分裂病の新しい治療薬を開発することを目的にしている。 本年度は、まず、D-セリンのシナプトソーム分画における取り込み活性を調べ、特異的な取り込みがナトリウムおよびクロライドに依存して認められることを明らかにした。この取り込み活性は大脳皮質ついで小脳において高く、肝臓、腎臓ではほとんど認められない。各種アミノ酸による阻害を調べた結果から、特定のアミノ酸を選択的に取り込むトランスポーターによって細胞外D-セリン濃度が調節されることが示唆された。一度取り込まれたD-セリンは脱分極刺激にかかわらずにカルシウムに非依存性に放出された。 一方、in vivoマイクロダイアリシス法により大脳皮質前頭前野における細胞外D-セリン濃度の変化を調べたところ、薬理学的解析によってGABA作動性ニューロンがD-セリン濃度の調節に直接関与すること、およびそれによりNMDA受容体機能に影響を与えることが明らかとなった。D-セリン合成に関してはグリア細胞系の関与が推定されているが、局所の神経細胞体の選択的破壊によって組織中のD-セリン含量および細胞外D-セリン濃度がいずれも低下している結果が得られたことから、局所ニューロンがD-セリンの合成や再取り込みにかかわることが示唆された。 現在、これらの細胞外D-セリン濃度の調節に直接かかわる分子の解析に取り組んでいる。トランスポーター、代謝酵素を含むこれらの分子の構造および機能を解明することによりそれらを標的とする新規の抗精神病薬の開発が可能となると考えられ、難治性精神疾患の治療法および診断に結びつく関連遺伝子群の候補が明らかとなることが期待される。
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[Publications] Chain, D. G. et al.: "Formation of persistently active protein kinase A during long-term facilitation in Aplysia requires the action of the ubiquitin-proteasome pathway"Neuron. 22. 147-156 (1999)
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[Publications] Yamamoto, N. et al.: "Activation and degradation of the transcription factor C/EBP during long-term facilitation in Aplysia"J Neurochem. 73. 2415-2423 (1999)
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[Publications] 山本直樹,他: "内在性D-セリンの脳内代謝機構と新規精神分裂病治療薬開発への応用に関する研究"厚生省・精神分裂病の本態に関する生化学的、生理学的、遺伝学的研究班報告書. 47-50 (1999)
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[Publications] 山本直樹,他: "内在性D-セリンの脳内代謝機構の解明と新規抗精神病薬開発への応用に関する研究"精神薬療基金研究年報. 31. 17-22 (1999)
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[Publications] 山本直樹: "今月のkey words : late response gene, AP-1 consensus sequence"脳の科学. 21. 357-358 (1999)
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[Publications] 西川徹,他: "哺乳類脳における内在性D-セリン"日本神経精神薬理学雑誌. (印刷中). (2000)
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[Publications] 山本直樹、西川徹: "Phencyclidine.臨床精神医学講座 第8巻 薬物・アルコール関連障害"中山書店. 10 (1999)