1999 Fiscal Year Annual Research Report
リゾホスファチジン酸による好中球活性酸素生成の調節およびその異常の意義
Project/Area Number |
11770585
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 良和 東京医科大学, 医学部, 助手 (10287120)
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Keywords | 好中球 / リゾリン脂質 / スーパーオキシド |
Research Abstract |
活性酸素生成及び分解調節が広い意味での生体防御と考えられる。好中球活性化過程でのホスホリパーゼA_2によるリン脂質分解産物であるリゾリン脂質のうち、リゾホスファチジルコリンは活性酸素生成能を増強するが、リゾホスファチジン酸(LPA)は抑制する。われわれは加齢に伴うLPAの過剰生成がO^-_2生成能低下に関与していることを報告し(FEBS Lett 394:149,1996)、抑制困子による好中球活性化調節メカニズムの存在を示唆した。LPAは他の細胞系においては受容体を介し低分子量G蛋白rhoやracの活性化やアクチン重合が起こすが、好中球ではこの受容体の存在は確認されていない。そこで、リゾリン脂質の好中球O^-_2生成に及ぽす効果や、LPA処理好中球におけるracの活性化、アクチン重合などの有無を確認した。リゾリン脂質のスーパーオキシド(O^-_2)生成能に対する効果を見るために、末梢正常好中球をデキストラン沈降法、比重遠沈法、低張溶血法にて分離しO^-_2生成能をシトクロムc還元法にて測定し、リゾリン脂質の活性酸素生成能に対する効果を見たところLPAによるO^-_2生成抑制効果とともにリゾホスファチジルコリンによる増強効果を認めることを確認した。一方、低分子量G蛋白の一つであるracは好中球が活性化すると細胞質から細胞膜へ移行すことが知られており、LPAのracに対する効果を好中球で見るため、好中球をLPAで処理し、膜成分と細胞質成分に分離し、Immunoblotting法でracの発現を検討したところ、racの移行には関連しないと思われた。また、アクチン重合を蛍光色素Oregon Green 488 Phalloidin(Molecular Probes)を用いLPA処理した好中球でflow cytometryにて測定したところ、アクチン重合はみられなかった。以上の結果より、これまでの受容体を介した経路でのLPAの効果では好中球活性酸素生成能に対する効果は説明できないことが示唆され、次年度のこの機構の解明に努める予定である。
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