1999 Fiscal Year Annual Research Report
Na^+/HCO_3^-共輸送体遺伝子変異と近位尿細管性アシドーシスとの関連性の解明
Project/Area Number |
11770603
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
稲冨 淳 杏林大学, 医学部, 助手 (00311960)
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Keywords | 近位尿細管性アシドーシス / Na^+ / HCO_3^-共輸送 / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
1.研究目的 腎の重要な役割の一つに体液のpHを一定の範囲に保つこと(酸塩基平衡)がある。私の所属していたグループでは先に、酸塩基平衡の先天的である近位尿細管性アシドーシス(pRTA)に様々な症状を合併する一女児例を報告した(Pediatr.Nephrol.8:70-1,1994)。我々は腎近位尿細管に存在するNa^+/HCO_3^-共輸送体(NBC)の異常が本疾患の原因であると推定し、その仮説を証明することを目的として研究を開始した。 2.研究方法 既に報告されているヒトNBCの塩基配列をもとに、ヒト腎臓cDNA libraryからNBCcDNAを単離した。得られた正常ヒトNBCcDNAに対して一塩基置換を行い、患者変異NBC遺伝子と相同なcDNAを作製した。 正常型および患者型NBCcDNAを培養細胞(ECV304)に発現させ、BCECFを用いた細胞内pH測定系により、細胞内pH変動に対する反応を比較した。また、アフリカツメガエル卵母細胞に正常型NBCおよび患者型NBCcRNAを発現させ、Na^+,HCO_3^-共輸送に伴う細胞膜電流を観察することにより機能を比較した。 3.結果 NBCを発現させた培養細胞の、酸負荷からの細胞内pHの回復速度を測定した。2種類の変異により、回復速度はそれぞれ正常型の55%、57%となった。アフリカツメガエル卵母細胞発現系において、Na^+/3HCO_3^-共輸送に伴う電流を比較した。同じ変異により電流はそれぞれ正常型の27%、3.0%に低下した(p<0.005)。 4.考察及び今後の課題 我々は独自の臨床的観察から、NBCの異常がpRTAの原因であると推定したが、患者型NBCの機能低下を示すことにより、この仮説を証明することができた。pRTAの成因を分子生物学的に明らかにした世界最初の報告として、海外の学術誌に成果を発表した(次項)。現在、NBCの生理的役割とpRTAの病態を更に詳しく解明するため、正常型と患者型NBCのkinetics、電位依存性の比較検討を行っている。
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Research Products
(1 results)