1999 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化制御におけるトロンビン受容体とウロキナーゼ受容体の役割に関する研究
Project/Area Number |
11770612
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
常石 秀市 神戸大学, 医学部・附属病院, 助手 (10271040)
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Keywords | グリア分化 / トロンビン受容体 / TRAP |
Research Abstract |
神経系において豊富に発現しているトロンビン機能的受容体(protease activating receptor-1:PAR-1)について、グリア系の分化発達とその障害発生機序における役割を検討した。ラット・グリオーマC6細胞を対象とした。リガンドペプチドであるTRAP(thrombin receptor activating peptide)によるPAR-1の活性化は、血清除去負荷や無グルコース負荷に対する細胞生存率を有意に向上させた。 C6細胞の2方向性グリア分化能へのPAR-1の影響を、TRAPおよびPAR-1遺伝子のアンチセンスDNAを用いて検討した。PAR-1の活性化は、レチノイン酸によるproteolipid protein(PLP) mRNAの発現誘導を抑制し、オリゴデンドログリア方向への分化を障害した。一方、PAR-1の抑制は、グリア線維性酸性蛋白(GFAP)、PLP両方のmRNA発現を増加させ、アストログリア、オリゴデンドログリア両方向への分化を促進させた。 これらのことから、トロンビン機能的受容体の活性化は、神経系細胞の分化を一時的に抑制し、障害環境への閾値を上昇させることが示唆された。 ラット脳におけるPAR-1の発現をノザンブロット法にて解析し、神経グリア細胞の増殖・遊走時期(分化前段階)である出生〜日齢15における豊富なmRNA発現を確認した。 日齢7の幼若ラットの脳室内へTRAP5μgを注入し、その後低酸素虚欠負荷をかけ、負荷後7日目に組織障害評価を行った。TRAP注入処置は海馬CA1領域における神経細胞数の減少を有意に抑制した。ラットモデルにおいても、トロンビン受容体の活性化により障害への閾値が上昇することが示唆された。
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