2000 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化制御におけるトロンビン受容体とウロキナーゼ受容体の役割に関する研究
Project/Area Number |
11770612
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
常石 秀市 神戸大学, 医学部・附属病院, 助手 (10271040)
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Keywords | グリア分化 / トロンビン受容体 / PAR-1 / TRAP / アポトーシス |
Research Abstract |
トロンビン受容体の一つであるProtease activating receptor-1(PAR-1)の活性化が、グリア細胞の分化を一時的に抑制して障害から細胞を防護すること、さらにPAR-1の活性化抑制は、逆にグリア分化を促進させることを、細胞培養系にて確認した。 その生体応用として、PAR-1の人工的リガンドであるTRAP(Thrombin receptor activating peptide)を生後7日齢のラット脳室内へ微量注入し、低酸素虚血(HI)脳障害への影響を検討した。一側頸動脈結紮と8%O2負荷2時間のHI負荷による海馬CAl領域の神経細胞脱落率を負荷7日後に検討したところ、生食コントロール群で33.3±12.8%、TRAP0.5μg注入群で1.6±3.6%、TRAP50μg注入群で39.3±27.8%と、低濃度にて明らかに細胞障害を軽減し、高濃度にては逆に障害を増強した。Apoptosis現象の評価を、DNA ladder formation、single strand DNA(ss-DNA)染色、活性型caspase-3染色で半定量化したところ、生食コントロール群とTRAP高濃度群では、明瞭なDNA ladderをゲル電気泳動にて確認し、抗ss-DNA染色ならびに抗caspase-3染色にて、多数の陽性細胞を認めた。一方、TRAP低濃度群ではDNA ladderを認めず、無処置群と同等のapoptosis陽性細胞数であった。 PAR-1の至適な活性化は、分化現象を抑制し、かつapoptosisを抑制することで、HI負荷による脳障害を軽減させることが期待される。しかし、至適限度以上の活性化は、逆にapoptosisを促進させ、脳障害を増悪させる可能性が考えられた。
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