1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト周産期脳循環障害におけるアポトーシス関連遺伝子発現に関する分子病理学的研究
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11770622
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 国立精神・神経センター, 疾病研究第2部, 研究員 (50243407)
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Keywords | アポトーシス / 周産期 / 未熟児 / 低血糖 / 橋鈎状回壊死 |
Research Abstract |
本年度は、周産期脳循環障害に多くみられる橋鈎状回壊死(Pontosubicular neuron necrosis(PSN))について、その病態形成に重要な因子を臨床病理学的、分子病理学的に検索した。 1.臨床病理学的検索:神経病理学的にPSNと診断された症例と正常対照を、臨床的に低血糖を伴う群と在胎21週から30週の未熟児群、31週から40週の成熟児群にわけて、ヘマトキシリン・エオシン染色、in situ tailing reaction(TUNEL)法により、アポトーシスの形態学的および量的評価臨床病理学的に調べた。その結果、未熟児群と成熟児群間で、核崩壊像とTUNEL陽性細胞数のいずれも有意差があった。低血糖群は未熟児群よりも核崩壊像、TUNEL陽性細胞数が多かった。 2.遺伝子病理学的検索:胎生21週と38週のPSN症例と正常対照の橋核について、RT-PCR法によりcaspase3(CPP32)のmRNAを調べた。その結果、caspase3(CPP32)のmRNAは、PSN症例と正常対照例に差がなかった。 PSNにおいて、特徴的な神経細胞の核崩壊像とTUNEL法による検索からその病態形成にアポトーシスが関与し、胎生30週以下の未熟児と低血糖が危険因子として働いているものと考えられる。しかし、caspase3(CPP32)のmRNAの発現には差がなく、より広範にアポトーシスに関する細胞内シグナル伝達機構が働いているものと思われる。今後、この点と成熟児と未熟児のアポトーシスに働くメカニズムの違いを調べる。
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