2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11770728
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
植木 孝浩 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (10309461)
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Keywords | 肝硬変 / 大量肝切除 / 術後肝不全 / 肝細胞増殖因子(HGF) / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
肝硬変合併肝切除後肝不全に対する治療をめざし、本年度は肝切除後肝不全モデルを利用してHGF遺伝子を実際に導入しその治療効果とその作用機序について検討した。 1.前年度に確立した肝不全モデルの術後経過を追跡すると、肝切除後に死亡するラットが多く見られ、以後DMNの追加投与時期に一致して死亡することを確認した。この結果から術後早期の肝不全に対する予防的な投与と、術後の維持的なHGF蛋白の供給が必要と考えた。 2.HGF遺伝子導入を肝切除術の8日前に、残肝となる肝右葉へ経門脈的にHVJ-liposome法で導入。さらに肝切除後は筋肉内注射で週に1回、合計2回の追加導入を行った。この結果HGF導入群では全経過を通して生存率を改善したが、特にラットの術後1週間に対照群に比し有意に生存率を改善して肝不全死を回避した。 3.2.の結果から、解析のポイントを術後早期に絞り検討を行った。結果、術後早期の核分裂像はHGF遺伝子導入群で有意に増加し、この生存率の改善にはHGFの肝細胞増殖促進作用が有力に関与していることが明らかとなった。また肝切除後第3病日ではHGF導入群では対照群に比し、肝細胞のアポトーシスが抑制されており、術後の肝不全の進行に関与しているものと判断した。 4.肝切除後早期に肝細胞のアポトーシスを誘導する原因を解明するため、現在様々な物質、サイトカインなどを解析している。この中で肝硬変の肝組織中に増加しているTGF-β1に注目し検討を行った。TGF-β1は肝細胞をアポトーシスに至らしめる作用を有するといわれるが、今回の実験では両群間に差は見られなかった。一方でHGFの抗アポトーシス・肝細胞保護作用についても検討を進めている。
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[Publications] 植木孝浩: "肝細胞増殖因子(HGF)を用いた肝硬変の遺伝子治療"医学のあゆみ. 別刷. 169-175 (2000)
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[Publications] 植木孝浩: "肝線維化・肝硬変への肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療"最新医学. 55・8. 1788-1795 (2000)
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[Publications] 植木孝浩: "肝硬変に対する遺伝子治療"カレントテラピー. 19・1. 65-69 (2001)
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[Publications] 植木孝浩: "遺伝子治療学の現状と将来- 肝硬変症"日本臨床. 59・1. 152-156 (2001)