2000 Fiscal Year Annual Research Report
肺移植における遺伝子治療の応用・再潅流障害抑制と免疫寛容導入
Project/Area Number |
11770740
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永廣 格 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (00311803)
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Keywords | 肺移植 / 遺伝子治療 / カチオニック・リピッド |
Research Abstract |
導入遺伝子をPCMV-beta gal遺伝子として、遺伝子・カチオニックリピッド複合体の導入経路に関する検討をおこなった。同量の遺伝子量を、摘出肺の気道・肺動脈・肺静脈の3つの経路から投与し、移植後の肺機能と遺伝子発現量の検討をおこなった。まず、移植後の肺機能では100%酸素投与下において、動脈血酸素濃度は、気道投与群(B群)にて平均59.9mmHg、肺動脈投与群(A群)では269mmHg、肺静脈投与群(V群)では432mmHgであった。B群はA群、V群に比べ、有意に低値を示した。また、最高気道内圧は、B群で平均38mmHgであったのに対し、A群では27mmHg、V群では23mmHgと、B群は他の2群よりも有意に高値を示した。これらのことより、気道内投与は他の投与経路に比べ、肺グラフトの障害が強いことがわかった。一方で、移植されたグラフト内のLac-Z発現量をRT-PCRにて定量したところ、B群で22.1(Lac-Z/GAPDH)、A群で0.56、V群で0.53であった。B群では他の2群に比べ有意に高い導入効率を示した。以上のことより、導入効率の面から言えば気道内投与が最も効果的であるが、肺傷害の程度は強いことがわかった。このことから、現段階では、肺動脈または肺動脈からの投与が適切と考えられた。以上の要旨は、平成13年度の日本心肺移植研究会、日本外科学会にて発表する予定である。次に、保存温度と肺傷害/遺伝子導入効率についての検討をおこなっている。肺グラフトを摘出し遺伝子・カチオニックリピッド複合体を肺動脈から投与した後、4℃で保存する群(4℃群)、10℃群、16℃群、23℃群の4群を作成した。100%酸素換気下での動脈血酸素分圧は、4℃群:514mmHg、10℃群:550mmHg、16℃群:466mmHg、23℃群:194mmHgであった。4℃群、10℃群は23℃群よりも有意に高値を示した。また、気道内圧は、4℃群:l5mmHg、10℃群:22mmHg、16℃群:26mmHg、23℃群:37mmHgであった。4℃群、10℃群は23℃群よりも有意に低値を示した。これらのことは、23℃に比べ、4℃、10℃といった保存温度は、移植後の肺機能の面から見ると他の2群よりも優れていると考えられる。一方、現在RT-PCRにて移植肺内の遺伝子発現量を測定中であるので、その結果との検討により、至適保存温度が得られるものと思われる。
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