1999 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショック蛋白質の発現抑制と中等度脳低温療法施行時に認められる易感染性との関係
Project/Area Number |
11770759
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩崎 忠彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60278687)
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Keywords | 熱ショック蛋白質 / 脳低温療法 / 重症頭部外傷 / 感染症 |
Research Abstract |
来院時Glasgow Coma Scale scoreが8点以下の重症頭部外傷患者17例を無作為に低温群(受傷後48時間34℃に冷却、3日間で37℃に復温)9例と常温群(5日間37℃に維持)8例に分け、(1)両群間で多核白血球(PMNL)の熱ショック蛋白質(HSP)発現量に差異があるかどうか、(2)中等度脳低温療法時にみられる感染症(肺炎、髄膜炎、敗血症)の発症時期とPMNLにおけるHSPの発現量の変化とが一致しているかどうか、を調べた。各々、来院時〜1病日(0-1)、2〜5病日(2-5)、6〜14病日(6-14)の3つの時期に採血を行い、PMNLにおけるHSP発現量(HSP27,HSP60,HSP70,HSP90)をフローサイトメトリーを用いて測定した。 HSP60の発現量は、常温群では3つの時期(0-1,2-5,6-14)でそれぞれ145.4±53.1、145.9±59.4、139.0±69.5(fluorescence/cell)であったのに対して、低温群では92.0±38.5、90.9±45.2、94.7±52.7と総ての時期で常温群の60%に抑制されていた(p<0.05)。ところが、他の3つのHSP(HSP27,HSP70,HSP90)発現量には、常温群と低温群の間に有意差は認められなかった。受傷から14日以内に感染症を合併した症例は常温群8例中2例、低温群9例中8例と、明らかに低温群で感染症の合併頻度が高かった(p<0.05)。HSP60発現量の経日的推移と感染症の合併時期との間には明らな関係を見出すことは出来なかった。 以上の結果は、第27回日本救急医学会総会(1999年11月東京)及びICRAN99(International Conference on Recent Advances in Neurotraumatology,1999年11月台湾)で発表し、英文医学雑誌に投稿中である。
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