2000 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子発現ベクター導入による脊髄損傷の遺伝子治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
11770796
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
内田 研造 福井医科大学, 医学部, 文部教官助手 (60273009)
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Keywords | 脊髄損傷 / 遺伝子治療 / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
【目的】損傷を受けた脊髄組織では損傷部とその近傍部における神経細胞、グリア細胞が神経栄養因子(BDNF,NT-3)を強く発現しその機能維持、再生に関与していると考えられている。今回我々はリポフェクチン法により損傷部位に直接神経栄養因子発現ベクターを導入、その遺伝子の脊髄内発現動態を免疫組織学的に調べた。 【方法】神経栄養因子発現ベクターであるBDNF-Myc-His/pIRES-EGFP vectorを作製した。14-16週齢雄性Wister Ratを用い、硬膜外より60gの重錘で1分間圧迫し脊髄不全損傷モデルを作製した。損傷直後ベクターをLipofectAMINEと混合(lipofectin method)、損傷部位へマイクロシリンジで1μl min^<-1>(total 10μl)の髄内投与を行った。HE染色、Nissl染色を行い、抗BDNF抗体、抗GFAP抗体による蛍光免疫染色で評価した。コントロール群と比較検討し、経時的に観察した。 【結果】抗BDNF抗体陽性細胞は損傷後増加、以後プラトーとなっており、損傷後3、5日では全GFP陽性細胞が抗BDNF抗体陽性となっていた(陽性率100%)。抗GFAP抗体陽性細胞も同様に損傷後3、5日で増加し8日目ではGFP陽性細胞よりも有意に増加、14日ではGFP陰性細胞が45%〜65%を占めていた。 【考察および結論】脊髄損傷に対する遺伝子治療の試みとしてはその導入効率の点からウイルスベクターを用いたものが散見される。しかしながら今回行ったリポフェクチン法による脊髄組織への直接注入でもある程度の導入が可能であることが明らかになった。損傷によって出現した反応性アストロサイトにも内因性BDNFが発現すると予想されるが、この研究では導入された遺伝子はその殆どが反応性アストロサイトに貪食され、BDNF発現の増強効果に関与するものと考えられた。
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