2000 Fiscal Year Annual Research Report
受容体機能調節酵素に対する麻酔関連薬剤の影響と加齢・病態による変動の解析
Project/Area Number |
11770834
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
斎藤 繁 群馬大学, 医学部, 助手 (40251110)
|
Keywords | G蛋白 / 燐酸化酵素 / 血管拡張薬 / ベータ受容体遮断薬 / 静脈麻酔薬 |
Research Abstract |
ラット前脳シナプトゾームを用いた実験により、揮発性麻酔薬ハロタンがベータ受容体燐酸化酵素の酵素活性をどの様に修飾するか検討した。この際、酵素活性は、この燐酸化酵素によって特異的に燐酸化される合成ペプチドを基質として測定した。また、燐酸化酵素の細胞内局在をこの酵素に対する特異抗体を用いて調べた。その結果、ハロタンは、ベータ受容体燐酸化酵素の細胞質分画から細胞膜分画への移動を促進することが推察された。この効果には用量依存性が認められたことから、何らかの薬理学的な作用によりもたらされた効果であると考えられた。ベータ受容体燐酸化酵素の細胞膜への移動は、受容体脱感作の重要なステップであると言われていることから、ハロセンは受容体脱感作の過程を修飾する作用があるものと思われる。類似の現象がCキナーゼにおいても認められることが、当研究室を含む複数の施設から報告されているが、揮発性麻酔薬の全てが、このような効果を有するのか、他の燐酸化酵素への影響も同様なのかは今後の重要な研究課題である。 臨床医学的検討事項として、静脈麻酔薬プロポフォールおよびチオバルビツールが交感神経刺激に対する心血管系の反応をどの様に修飾するか、電気痙攣療法時の循環変動をモデルとして検討した。更に、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬がその循環変動に影響を与えるかどうか、併せて検討した。その結果、プロポフォールは交感神経刺激による心血管系変動、特に脳血流速度変化をチオバルビツールよりも強力に抑制することが判明した。また、この交感神経刺激抑制作用は、降圧剤として臨床使用される薬剤のなかでは、ベータ遮断薬のみでなく、一酸化窒素供給作用を持つ血管拡張薬にも認められることが推察された。 以上のことから、揮発性麻酔薬ならびに静脈麻酔薬は交感神経系神経伝達を修飾することが、実験的ならびに臨床的に示唆された。
|
-
[Publications] Shigeru Saito,Yuji Kadoi,Akihiro Ohyama,Fumio Goto: "Halothane facilitates the translocation of GRK-2 and phosphorylation of beta2-adrenergic receptor in rat synaptosomes."Canadian Journal of Anaesthesia. 47. 73-80 (2000)
-
[Publications] S Saito,Y Kadoi,N Iriuchijima,H Obata,K Arai,T Morita,F Goto: "Reduction of cerebral hyperemia with anti-hypertensive medication after electroconvulsive therapy."Canadian Journal of Anaesthesia. 47. 767-774 (2000)
-
[Publications] S Saito,Y Kadoi,T Nara,M Sudo,H Obata,T Morita,F Goto: "The comparative effects of propofol versus thiopental on middle cerebral artery blood flow velocity during electroconvulsive therapy."Anesthesia and Analgesia. 91. 1531-1536 (2000)
-
[Publications] 斎藤繁: "血小板由来脂質メディエーター、リゾフォスファチジン酸の神経突起再生現象に及ぼす影響について"蘇生. 19. 16-22 (2000)