1999 Fiscal Year Annual Research Report
エストリオールの骨芽細胞に対する直接作用に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
11770938
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 茂樹 神戸大学, 医学部, 助手 (70294212)
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Keywords | エストリオール / エストラジオール / 骨芽細胞 / 増殖脳 / vitaminD3 / IGF-I / Northern Blotting |
Research Abstract |
エストリオール(E3)の骨量に及ぼす影響は臨床的によく知られているが、その作用機序の詳細は明らかではない。そこで骨芽細胞に対するE3の直接作用を検討する目的で、骨芽肉腫細胞(HOS)のin vitro培養系を用いて、E3のHOS細胞増殖能に与える影響を調べ、同時ににエストラジオール(E2)の作用と比較した。HOS細胞を、E2(10ng/ml)あるいはE3(1,10,100、l000ng/ml)添加下、非添加下に無血清培地で培養し、E2ならびにE3の細胞増殖能に与える影響を細胞数ならびにBromodeoxy uridine(BrdU)uptakeの免疫細胞化学的陽性率より検討した。またE2あるいはE3添加72時間後のHOS細胞から蛋白を抽出し、Westen blot法によりPCNA蛋白発現を調べた。また、IGF-Iが,骨芽細胞の重要な局所増殖因子であることに注目し、E3のHOS細胞におけるIGF-I産生能に与える影響を調べ、E3によるHOS細胞増殖促進へのIGF-Iの関わりを明らかにしようとした。また臨床的にE3とVitD製剤の併用効果が有効であったことから、同系においてE3とVitDの添加実験を行い、両剤によるHOS細胞増殖能に与える影響について検討を加えた。 E2(10ng/ml)ならびにE3(10〜100ng/ml)添加群では細胞数と蛋白量が添加72時間後に有意に増加したが、E3添加濃度が1ng/mlならびに1000ng/mlでは細胞増殖促進効果は観察されなかった。またE2添加とE3添加の間では増殖促進効果に差はなかった。一方、E2(10g/ml)ならびにE3(10〜100ng/ml)添加によってHOS細胞のBrdU陽性率は有意に増加したが、その効果発現にはE3では24時問を要したのに対し、E2では48時間を要した。Western blot法による検討では、E2ならびにE3添加によリHOS細胞のPCNA蛋白の発現増強を認めた。また、E2(10ng/ml)あるいはE3(100ng/ml)添加群ではコントロール群に比較しHOS細胞内IGF-Iレベルが増加傾向を示した。またHOS細胞にはIGF-IcDNAprobeとハイブリダイズするmRNAの発現を認め、E2(10ng/ml)あるいはE3(1〜100ng/ml)添加によリHOS細胞でのIGF-ImRNA発現が増強することを認めた。E2ならびにE3添加群間でその発現の増強効果に差はなかった。またエストロゲンとVit DのHOS細胞増殖能に与える影響についてMTTassayにより検討した成績では、エストロゲンとVit D(10^<-9>M)の同時添加により、添加24、48時間後においてHOS細胞増殖能が増加する傾向が認められた。以上より、E3は至適濃度(10〜100ng/ml)でHOS細胞の増殖活性を高め、その促進効果はE2(10ng/ml)と同等であった。またHOS細胞でのE3の作用発現に要する時間はE2に比較して短いことが推察された。E2あるいはE3添加によりHOS細胞内IGF-Iレベルが増加すること、HOS細胞内にIGF-ImRNAの発現が観察され、その発現レベルが、E2ならびにE3添加により増強したことから、E2あるいはE3のHOS細胞増殖促進効果はIGF-Iとその受客体を介して発揮される可能性が示唆された。さらにE2、E3とVitD3の同時投与が、E2、E3単独群、VitD単独群に比し、HOS細胞増殖能を高める可能性が示唆された。
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