2000 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚三次元培養を用いた真皮-表皮相互作用、創傷治癒と、組織工学に関する研究
Project/Area Number |
11771095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 睦 東京大学, 医学部・附属病院, 教務職員 (50311618)
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Keywords | 組織工学 / 皮膚三次元培養 / 上皮分化 / サイトケラチン / 真皮表皮相互作用 |
Research Abstract |
前年度までの研究により、真皮線維芽細胞と表皮角化細胞はそれぞれ解剖学的部位に特異的な分化をする特質をそれ自身で持ち合わせていることが明らかになった。 手術時に余剰となった口腔粘膜から粘膜固有層由来の線維芽細胞と粘膜上皮細胞を、皮膚からは真皮由来の線維芽細胞、表皮角化細胞を採取し培養細胞を得た。これら2種類の線維芽細胞を用いてコラーゲンゲルを作成して間葉モデルにして、それぞれの上に粘膜上皮細胞と表皮角化細胞を播種して三次元培養し、それぞれ、ホモ・ヘテロに組み合わせた4種類の皮膚・粘膜モデルを作成した。得られたモデルのパラフィン切片では、細胞の角化形態を調べた。また凍結切片では、粘膜上皮・表皮に特異的な発現をするサイトケラチン4-13、サイトケラチン1-10で免疫染色を行い、その発現形式を調べた。 その結果、間葉モデルの線維芽細胞が真皮由来のものでは、その上に播種する上皮細胞が表皮由来であれ口腔粘膜由来であれ、皮膚に特異的なサイトケラチン1-10をsuprabasalで発現することが確認された。間葉モデルの線維芽細胞が口腔粘膜固有層由来のものでは、表皮角化細胞を播種したものだけがサイトケラチン1-10を発現し、粘膜上皮細胞を播種したものでは発現が見られなかった。サイトケラチン1-13では、間葉モデルが口腔粘膜固有層由来の線維芽細胞で上皮も口腔粘膜上皮細胞のモデルのみがsuprabasalに発現し、残りのモデルではモデルの場所によりさまざまな発現様式を示すことが分かった。角化形態では、口腔粘膜上皮細胞は一般には錯角化しか見られないが、間葉モデルに真皮線維芽細胞を用いたものに限って、正常角化するものが認められた。 以上の所見より、上皮細胞はそれぞれに固有な分化形態を独自に示すことができるが、上皮下に存在する線維芽細胞は上皮細胞に対して、その線維芽細胞の由来する場所の分化形態の方向に修飾する能力を持つ可能性が示唆された。 このことは、口腔粘膜を表皮の代替として用いることができる可能性があり、将来的には人工真皮に部位特異的な線維芽細胞を播種し、上皮細胞をその上に播種したものをヒトに移植し、解剖学的部位特異的な複合皮膚のTissue engineeringの臨床応用が可能であることを示していると考えられる。
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