2000 Fiscal Year Annual Research Report
優れた耐食性をもつイオン注入表面改質チタンの骨形成促進に関する研究
Project/Area Number |
11771230
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
澤瀬 隆 長崎大学, 歯学部・附属病院, 講師 (80253681)
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Keywords | PSII / イオン注入 / 酸化チタン / インプラント / 骨接触率 |
Research Abstract |
プラズマ発生高周波出力30W,パルス電圧-22kV,パルス周波数100Hz,パルス時間50μsの条件下におけるプラズマソースイオン注入(PSII)法により,純チタン試料に100nmの表層酸化膜が成膜され,PBS溶液中での分極曲線の測定により,耐食性の向上が追証された.また試料を動物実験用の複雑な3次元構造をもつネジ型チタンインプラントとした場合も,均一な厚さの酸化膜が成膜され,PSII法の有効性が確認された.生成された酸化膜はその条件のコントロールにより,チタン:酸素の元素比が1:2になるよう設定され,X線回折による結果の上では明らかな酸化チタンの結晶を認めず,未処理の純チタン表層酸化膜と同様の組成比ならびにアモルファス構造を有し,厚径のみが異なることが示唆された. 次いで上記の条件下で酸素イオン注入を行った純チタンネジ型インプラント(実験群)とコントロールとして未処理のインプラント(コントロール群)を,通法に従い家兎脛骨に埋入し,6,12週後のインプラント周囲に新生される骨組織の組織形態計測学的解析および生体力学的解析を行った.6,12週後いずれにおいても,実験群はコントロール群に比し,統計学的有意差は認めなかったものの,インプラントと新生骨の接触率ならびにインプラント周囲に新生された骨量が増加する傾向が見られた.また組織学的に6週後,実験群周囲の骨組織に多くの発達した層板構造が観察された.しかしながらインプラントと新生骨組織との剪断力の測定結果には,両者間に全く差を認めなかった.実験群において組織学的に観察されたわずかな骨形成の亢進も,インプラント把持のための抵抗力を有意に向上するには到らなかったものと推測される.今後さらに免疫組織学的な骨形成課程の詳細を検討する予定である.
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