Research Abstract |
チタンのパッチテスト用試薬として選択したチタン化合物のうち,硫酸第2チタン水溶液は強酸性を示すため,ウサギを用いて至適濃度の検索を行なった.その結果,3%以上の濃度では,ウサギの皮膚に酸の刺激が原因と思われる潰瘍が形成された.そのため,3%以上の硫酸第2チタン水溶液ではパッチテストの際,擬陽性と判定される可能性があるため,2%以下の濃度で検査するのが妥当と考えた.酸化チタンはいずれも刺激性がなく,1%濃度で均一な懸濁液が得られると判断した. チタンのパッチテスト試薬をヒトへ応用するにあたり,長崎大学歯学部倫理委員会へ本研究を申請し,承認を得られた.被験者は本研究の説明を十分に受け,同意を得られたものを対象に行なった. 使用する試薬は,1%酸化チタン水溶液(アナターゼ型,ルチル型,アモルファス)と2%硫酸第2チタン水溶液の計4種類である.硫酸第2チタンによる擬陽性反応を識別するために,コントロールとして1.2%硫酸を用いた.一般のパッチテストの検査方法に準じ,48時間の貼付と貼付後48,72,168時間に,ICDRGの判定基準に従い判定を行なった. 最初に,金属アレルギーの疑いのない健常被験者8名に,チタンパッチテストを試行した.その結果,2名の被験者が硫酸第2チタンに陽性反応を示し,そのうち1名は3種類すべての酸化チタンにも陽性反応を示した.しかし,これら2名の被験者は金属アレルギーが原因と思われる症状がなく,チタンに感作されているかどうかパッチテストのみでは判断できないと考えられる. 次に,歯科用金属アレルギーの疑いで長崎大学歯学部第2補綴科を受診した患者17名に,チタンパッチテストを試行したが,陽性反応は検出されなかった. 今後,被験者数を増やしていくとともに,歯科治療においてチタンアレルギーが疑われる患者にチタンパッチテストを試行し,その有用性を検証していきたいと考えている.
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