2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11771263
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
山城 正司 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (40292974)
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Keywords | マイクロスコープ / 口腔粘膜癌 / 上皮異形性 / 乳頭ループ内血管 / 樹枝状血管 / 斜走血管 |
Research Abstract |
口腔粘膜癌は多彩な臨床像を呈するが、初期の癌は潰瘍も硬結も伴わないものが多く,癌周囲組織の上皮異形性の程度や異形上皮の範囲を特定するのは困難であった。正常口腔粘膜と,口腔粘膜癌,上皮性異形性の口腔粘膜微細構造の違いを明らかにするために,高品位マイクロスコープにより口腔粘膜の観察をおこなった。成人健常者の頬粘膜,舌縁,口底,歯肉について口腔粘膜の観察をおこなったところ、20倍で表在血管網の粘膜下層静脈は確認でき,50倍で樹枝状血管,斜走血管が明瞭に観察され,100倍以上で上皮乳頭内ループ状血管(ループ状に走行する毛細血管)の観察が可能であった。50倍および100倍で観察された表在血管網の構造的特徴は部位により異なっていた。頬粘膜は規則的に走行する細長い斜走血管が主体であったが,舌縁は太い粘膜下層静脈が目立ち,その間に短く細い樹枝状血管,斜走血管が観察された。口底は不規則に走行する樹枝状血管と,その先に樹実状に走行する短い斜走血管と上皮乳頭内ループ状血管が特徴的であった。一方,歯肉においては,付着歯肉は毛細血管末端のみが点状に観察され,遊離歯肉は上皮乳頭内ループ状血管のループのみが観察された。 一方、病理組織学的に上皮性異形成のある部位では,マイクロスコープによる拡大像が、健常口腔粘膜と比較して樹枝状血管の走行が不規則になるか、また、上皮角化に伴い樹枝状血管の走行が不明瞭となり、斜走血管や乳頭ループ内血管が不規則に配列する傾向などが認められた。これらにより異形上皮の存在をマイクロスコープにより非侵襲的に確認できる可能性が示唆された。マイクロスコープにより、癌組織と隣接する組織の、上皮性異形成の程度と範囲を正確に特定することが可能となれば,適切な手術範囲,手術法を決める上で有用な手段となり,したがって患者の手術後のQOL向上に寄与する可能性がある。
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