1999 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージ活性化因子のDMBA誘発ハムスター舌癌に対する抗腫瘍効果
Project/Area Number |
11771304
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
岸本 裕充 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (30291818)
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Keywords | マクロファージ活性化因子 / ビタミンD結合蛋白 / 口腔癌 / 免疫療法 |
Research Abstract |
ヒト血清中のビタミンD3結合蛋白を,B細胞由来のβ-ガラクトシダーゼとT細胞由来のシアリダーゼ順次処理することによって,マクロファージの活性化を強力に誘導する新たな因子としてのGcMAFを生成した.口腔癌モデルとして,化学発癌剤であるジメチルベンツアントラセン(DMBA)によるハムスター舌発癌系を用いて,GcMAFによる発癌抑制効果および抗腫瘍効果を検討した.すなわち,雄シリアンハムスター(5週齢)の舌縁部を,歯科用クレンザーによる擦過と1%DMBAの塗布を週3回反復することによって,舌扁平上皮癌を誘発させた.GcMAF 100pgを週2回,大腿部に筋注投与し,GcMAF非投与群と比較検討したところ,以下の結果を得た.GcMAF投与群と非投与群の順(各16匹)に,扁平上皮癌の発生率ではいずれも93.8%(15/16)で差を認めなかったが,発生時期では平均14.4週および13.2週と差を認めた.GcMAFの投与によって,わずかながら腫瘍発生の遅延効果を認めたことから,18週までの腫瘍重量に差を認めたが,それ以降においては投与群と非投与群の間の差は消失した.また,GcMAF投与群で23週以降,非投与群では21週以降に担癌ハムスターが腫瘍死しはじめ,発癌したハムスターの平均生存期間はそれぞれ32.5週,30.7週と,GcMAF投与群で若干の生存期間の延長を認めた.なお,GcMAFの副作用は全く認められなかった.また,in vitroにおける検討として,ハムスター腹腔内よりマクロファージを採取し,ハムスター頬粘膜癌由来培養細胞株(HCPC-1)と混合培養することにより,活性化されたマクロファージの細胞障害性についてもクロム放出試験を用いて検討したが,現時点ではマクロファージによる殺細胞効果は明らかではない.今年度の研究において,GcMAFは抗癌剤としての抗腫瘍効果は期待できないが,発癌の抑制あるいは延命効果を有する可能性があり,用量設定や投与方法も含め,再検討中である.
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