2000 Fiscal Year Annual Research Report
非線形数値解析を応用した歯周靭帯の性状分析と歯周組織診断への応用
Project/Area Number |
11771362
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
内藤 徹 九州歯科大学, 歯学部, 助手 (10244782)
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Keywords | 歯周病 / 歯周靭帯 / 炎症 / 粘弾性 / 非線形解析 / 診断 |
Research Abstract |
我々の開発したレーザー変位計を用いた測定法により、垂直荷重をかけた際の歯の微細変位を高精度かつ高速度で観察することが可能になった。今回の研究には、健康な体重8〜10kgのビーグル成犬6頭を用いた。被験歯は下顎左側第三前臼歯(P3)とし、計測基準点として下顎左側犬歯を用いた。デンタルフロス結紮による実験的歯周炎惹起前2週と1週の2回にわたり歯の変位計測を行い、その値の平均をベースライン値とした。変位測定は歯周炎惹起後1日目、3日目、6日目に同様に行い、同日に歯周病学的診査(PPD、PAL、ペリオトロン値、ペリオテスト値、X-ray撮影)も行った。変位測定は、静脈麻酔下にて頭部及び下顎部を測定台に固定し、分解能1μmの高精度レーザー変位計を用いて行った。歯に対する荷重は、垂直的に10gから100gまで10g刻みに2回ずつ加え、その平均を算出した。計測間隔は0.01秒とし、負荷時間は30秒、回復時間は5分に設定し、前回の荷重の影響が残存しないよう配慮した。P3の変位からCの変位の差分を算出し、P3正味のデータとした。得られたデータはAD変換後、パーソナルコンピューターにて分析を行った。その結果、一定荷重下の歯の経時的変位は2つのフォークトモデルからなる関数式によくフィットすることが明らかになった。x(t)は時間による歯の垂直変位量を、A,B,Cはそれぞれ定数を、タウとタウ'は変位がある一定量に達するまでに要する時間すなわち遅延時間に対応する量とすると、A、Bとも荷重依存性があり、また炎症時間が長引くほどその絶対量が大きくなっていた。タウは荷重に依存せず、健全および炎症歯ともほぼ同じ値を示した。また、タウ'は荷重に依存しないが、炎症時間が長引くほど小さくなっていることが明らかになった。以上より、荷重による歯の微小変位が2つのフォークトモデルの関数の重ね合わせにより、うまくシュミレートできることが確認された。また、得られた数値から、実験的歯周炎惹起後6日目の歯周組織の粘性的性質が低下していることが示唆された。歯周靭帯の病理組織学的な性状変化と、今回の変位のモデル関数の結果とは対応していることが考えられるので、今後も詳細な検討を重ねることにより、非侵襲的な歯周組織診断へと応用できる可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 元島ふくみ: "初期の実験的歯周炎罹患歯の垂直的荷重に対する変位動態"日本歯周病学会会誌. 43巻・2号. 1-10 (2000)
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[Publications] 田隅志保,元島ふくみ,内藤徹,日高理智,田中眞理子,横田誠: "インプラントに対する垂直的負荷による微小変位の測定"日本歯周病学会会誌. 41巻. 77-77 (1999)