2000 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧自然発症ラットを用いた実験的歯肉増殖症の発症メカニズムに関する研究
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11771367
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 聡 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (70235357)
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Keywords | 歯肉増殖 / SHR(高血圧自然発症ラット) / WKY(正常血圧Wistar京都ラット) / ニフェジピン / Ca拮抗薬 / BrdU / TUNEL |
Research Abstract |
【目的】Ca拮抗薬の副作用として、歯肉に線維性増殖を誘発することが知られている。現在までの動物モデルにおいては増殖症についてのみ検討されており,血圧との因果関係の確証は得られていない。本実験では,従来の動物モデルでは補うことができなかった高血圧の物理的因子を加えることが可能な高血圧自然発症ラット(Spontaneously Hypertensive Rat;SHR)を用いて、前年度に引き続き、Ca拮抗薬誘発性歯肉増殖症の発症機序の解明を目的として、免疫組織化学的・生化学的検索を行った。 【材料と方法】実験動物には、SHRと、対照として正常血圧ラット(Wistar Kyoto Rat;WKY)を用いた。SHRおよびWKYに6週間,Ca拮抗薬ニフェジピン(NIF)の強制投与を行った後,歯肉を摘出し、BrdUやTUNEL法を用いて免疫組織化学的に検討を行った。さらに、歯肉片をホモジナイズし、RT-PCR法を用いた生化学的検索を試みた。 【結果】免疫組織化学的所見から、NIF投与群内でSHRとWKYとでは、細胞増殖活性またはアポトーシスを示す細胞の局在部位や標識率が異なった。BrdUによる細胞増殖活性能の検討では、接合上皮に血圧による違いが見られ、また、口腔歯肉上皮にNIF投与の有無による違いが見られた。一方、TUNEL法によるアポトーシスの検討では、SHRの歯肉溝上皮下結合組織にNIF投与の有無による違いが見られるにとどまった。RT-PCR法による生化学的検討については、薬物性歯肉増殖によりTGF-βとbFGFのmRNA発現が増加するという報告があり、血圧因子の関与を含めて現在も検討中である。 【結論】SHRとWKYにおけるNIF誘発性歯肉増殖症では、細胞動態へ影響する部位が細胞増殖活性能とアポトーシスとで異なり、さらに薬物の副作用と血圧による作用の2つの要因の関与が、示唆された。
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[Publications] 吉岡奈保,佐藤聡,三ツ林裕巳^*,河村博^*,鴨井久一: "ニフェジピン歯肉増殖症における歯周組織細胞動態に関する研究-SHRとWKYとの比較-"高血圧自然発症ラット学会学術集会誌. 36. 57 (2000)
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[Publications] 吉岡奈保,佐藤聡,河村博^*,鴨井久一: "高血圧自然発症ラットを用いたニフェジピン歯肉増殖症に関する研究-歯周組織細胞動態の検討-"日本歯周病学会会誌. 42秋季特別号. 179 (2000)