1999 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジのin vitro嗅覚ー味覚連合学習系の確立とその応用
Project/Area Number |
11771408
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 恵 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (80302610)
|
Keywords | 連合学習 / ナメクジ / 嗅覚 / 運動神経 / 電気生理 / 単離脳標本 |
Research Abstract |
軟体動物では感覚器とともに単離した中枢神経標本が長時間にわたって機能を保持し続けることから,神経活動を行動レベルの現象と密接に対応づけながら研究することが可能である.感覚器をつけたまま単離したナメクジの脳に嗅覚-味覚連合学習を行わせる(in Vitro学習)ことができれば,単離脳における現象と個体レベルの現象の対応付けが可能になる.そこで本研究ではin vitro学習系を確立し,その成立過程における神経活動を解析することを目的とした. 嗅覚学習は嗅覚中枢である前脳によって担われていると考えられている.そこではじめに,条件刺激と無条件刺激に対応する感覚刺激(嗅覚刺激および味覚刺激)を与えたときに,それぞれが前脳の神経活動に対して生じる効果を解析した.その結果,中世または誘引性の嗅覚刺激は前脳神経活動に対してほとんど効果を持たないのに対し,生来的に忌避性の嗅覚刺激は前脳神経の同期振動の振動数を増大させることが明らかになった.一方,忌避性の味覚刺激は前脳の同期振動の振動数を変化させた.これらの結果から,前脳の同期振動の振動数の増大は刺激の忌避性と関連していることが示唆された. 次に,すでに同定された外套膜収縮を担う運動神経(p-VN)の活動を忌避性行動の指標としてモニターして,嗅覚刺激と味覚神経刺激を組み合わせて与えて条件付けを行ったときに運動出力に変化が生じるかどうか調べた.その結果,条件付け前に比べて条件付け後ではp-VNの活動が増大することが明らかになった.これらの結果は,ナメクジにおいてin vitro嗅覚学習が可能であることを示している.
|
-
[Publications] Watanabe,S.et al.: "Glutamate induces C1^- and K^+ currents in the olfactory interneurons of a terrestrial slug"J.Comp.Physiol.A. 184. 553-562 (1999)
-
[Publications] 渡辺 恵 他: "ナメクジの嗅覚ー味覚連合学習"放射線科学. 42. 26-34 (1999)
-
[Publications] 渡辺 恵 他: "ナメクジにおける嗅覚ー味覚連合学習"蛋白質核酸酵素. 45. 380-386 (2000)
-
[Publications] Inoue,T.et al.: "In vitro odor-aversion conditioning and underlying neural mechanism in a terrestrial mollusc"Neorosci.Res.. 23. S256-S256 (1999)
-
[Publications] Inoue,T.et al.: "In vitro odor-aversion conditioning in a terrestrial mollusk"Soc.Neurosci.Abstr.. 25. 126-126 (1999)
-
[Publications] 渡辺 恵 他: "無脊椎動物の脳の働き 「脳研究への招待」"共立出版(小幡邦彦 編,印刷中). (2000)