Research Abstract |
【研究目的】洗髪台使用における洗髪援助による生体負担について,表面筋電図を指標に検討した. 【研究方法】健康人8名を対象に,洗髪台使用における洗髪援助をファーラー位,前屈位の2つの異なる体位で実施した.筋電図の測定部位は,胸鎖乳突筋(EMG1),僧帽筋上部(EMG2),僧帽筋中部(EMG3)とし,洗髪中連続的に記録し,A/D変換後,各洗髪行為毎(a:身体を倒す,b:頭髪に湯をかける,c:シャンプーで洗浄,d:すすぎ,e:乾燥)に分け,全波整流後積分値を算出した.洗髪手順は統一し各洗髪行為は目安の時間を設定して実施した.また各体位は被験者が最も楽と感じる体位で実施した. 【結果・考察】洗髪行為毎にみると,行為にかかる時間が異なるため積分値による単純比較はできないが両体位ともに,またEMG1,2,3すべてにおいて,平均積分値は乾燥時が他の行為に比べ比較的高値を示した.a〜dまで各洗髪行為の積分値を体位別に比較すると,EMG1ではa〜dのすべての行為でファーラー位の方が前屈位よりもわずかに高値を示したが,EMG2,3では,すべての行為において,前屈位の方が高値を示した.しかし,EMG2のcで前屈位がファーラー位よりも高値を示す傾向(p<0.1)が見られた以外は,どの行為においても2体位間に有意差は認められなかった.またa〜dの各行為の積分値を合計してみると,EMG1ではファーラー位が前屈位よりも高値を示しており(p<0.1),EMG2,3.は前屈位が高値を示した. 比較的負荷の少ないファーラー位でも,特に頚部への筋負荷は大きく,この体位での援助の際は頭部・頚部の支持固定が重要であること,また前屈位では,特に背部の負荷が大きいこと,さらに,ファーラー位よりも個々の積分値のばらつきが大きかったことから,負荷の程度に個体差がでやすいことなどを配慮した援助が必要であることが推察された.
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